命とクオリア（15）－CMのクオリア。

＠スッカリ涼しくなり、秋の声をそこここで聞くようになったが、体力の戻りがいつもの年より何故か遅い気がする。今年は格別に暑かったものなぁ。自転車に乗って買い物に行っても、何だか全身が、少々だるい。

＠今は季節の変わり目だから、体調管理には充分気をつけなければ。夜更かしなんて、もっての外だ。

＠きょうも自転車で外出していたら、夏の生き残りの蝉が弱々しく鳴いていた。

＠芸術の秋。今年は今まで見られなかった芸術作品や、突き抜けたコンテンポラリーアートに出会いたい。

＠あ！そうだ、見忘れてはいけないものがある。広告芸術だ！

＠昨日（09/01）、カレッタ汐留の中にある、電通のアド・ミュージアム東京（ADMT）へ行って来た。

＠今回は特別企画「昭和の広告展［Ⅰ］～モダンと激動の四半世紀」（開催期間：2007/08/01～09/24）ということで昭和元年（1926）からラヂオ・TVの商業放送が始まった昭和28年（1953）までの広告界の変遷を、沢山の展示資料とともに見せていくというコンセプトだ。

＠昭和が始まった1926年から、洗練されたモダニズムを追及してきた日本の広告界は、1937年から、戦争の色が濃くなるにつれ、段々自由度がなくなって、お菓子やたばこなどの嗜好品や宝石・時計などの贅沢品の広告が影を潜め、「撃ちてし止まむ　三月十日陸軍記念日」（歯磨「アカネ絹練歯磨」新聞広告）とか、「備えあれば憂い無し」（化粧品「カガシ液体コールド」ポスター）、「活かせ廃球（キレタタマ）！」（電球「マツダランプ」のポスター）とか、時局を反映した内容に代わらざるを得なかった。

＠戦争末期（1943～45頃）になると献納広告といって、広告主が国家に広告費をはらって商品のPRをするものが多くなっていった。この時の広告は、おもに日用品の広告ばかりであった。

＠そして1945年8月15日から始まった戦後の時代、兎に角食糧難でみんなが餓えまくっていた中にも、新しい国造りの槌音が響き渡るようになると、占領軍（進駐軍）などを通じてとうとうと急速に入って来たアメリカ文化が人々の豊かな暮らしへの期待を膨らませ、流行歌やレビュー、ラヂオヴァラエティ、ラヂオドラマなど様々な娯楽が、餓えに苦しむみんなを元気付けた。広告もそんな時代の空気を浴びて、夢や希望を呼び覚ますメッセージを世間に送り続けた。

＠そしてラヂオ・TVにおける商業放送の開始が、広告界に大きな革新をもたらした。CM（コマーシャル）の誕生だ。このCM黎明期から活躍しまくったのが三木鶏郎（トリロー）（1911～1994）。この人はいわば日本のCMソング王というべき人で、松下電器の「明る～いナショナル♪」も、今は亡きミツワ石鹸のCMソング「ワ、ワ、ワ～ワが三つ♪」も、この人の作詞・作曲作品なのだ。ちなみにトリローは、あの「ビルの町にガオー♪」の「鉄人28号」の歌や「ジャングル大帝」のテーマなどもつくっている。

＠そして今回の展示で私が一番面白いと思ったのは（昭和モダニズムの広告ポスター群も、販促のおまけたちもよかったけれど）、懐かしいCMソングがトリロー本人の経歴や当時のCM映像とともに記録されている、このコーナーなのだった。当時のCM映像はあの時代だから当然なのだが、みんな白黒アニメだった。ずっと見ていくと、自分があたかもあの時代にタイムスリップ！したような感覚が沸き起こってくる。なんともいえないわくわく感に満ちたクオリアが感ぜられる。

＠珍しかったのは「モナ化粧品」のCM。他の作品のように人や動物など具体的な事物ではなく、抽象的・幾何学的な○や何重○の図形が飛び跳ねたり、波紋をつくったりする絵柄がとてもモダンで素敵であった。童謡歌手・伴久美子と思しき歌手が歌っているおしゃれな歌に合わせて、図形がスムーズに動くさまが面白かった。

＠他には日清のチキンラーメンや田辺のアスパラなどの歌があったが、以前買ったCMソングを集めたCDに納められているものとは、明らかにヴァージョンが違っているものがあって面白かった。おかげでわくわくなクオリアがポコポコ生まれて、楽しかったなぁ。

＠トリローの作曲したCMソングを収めたCDがこのミュージアムのショップで売っているんだそうな。欲しいなァ…でも、うちのステレオがいま故障中なんだよおおおぉぉぉぉ･…（泣）。

＠上記のように9月の24日までやっている。もう一度見に行こう。その時はステレオが直っているか、自分の手許にCDウォークマンがあるか、のどっちかだ（どっちも可能性薄し）。嗚呼。