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夏の三四郎池。

@久々に東大本郷キャンパスを訪れた。夏だけあって春ごろよりも、木々や建物の間に繁茂する草叢の緑も濃くなり、生き生きとしているように見えた。

@実はこの数時間前、話題の「赤坂サカス」を一度見に行こうと、この暑いのにヒーヒー言いつつ、赤坂TBS前に出来た“新名所”BIZタワーの前までやって来たが、一瞥するなり、嗚呼こりゃつまらんわぁ、と感じた。目の前にある建物が、地上2階地下1階しかなく、しかも上の階はホトンド料理屋ばかり。

@実はここの近くに牛メシ屋「松屋」があって、そこでハンバーグにアツアツのトマトソースと半熟卵がかけられた“うまトマハンバーグ定食”を食べてお腹がいっぱいになってる所為もあり、何処の料理屋を覗き込んでも入る気は当然乍ら起こらず(赤坂という一等地だけあっていわゆるお洒落な料理屋ばかりであった)、また料理屋以外の他の店舗も少なく、これじゃ何時までいてもしょうがない、つまらんなぁ…と思ったトタン、やわらかなベージュいろの石壁が目に付いた。

@なんとこの石壁、所々に化石化した古代生物の姿が…。アンモナイトをはじめ、凸レンズを縦割りにしたような形の黒っぽい生き物や、昔の珊瑚の断片など、さまざまな形をした生物化石が埋まっているシロモノなのだ。同じような石壁は、ここからもっと先にある六本木ミッドタウンや上野松坂屋の階段にも見られる(因みに松坂屋の場合は、主に珊瑚やフズリナ系の生物化石が多い)。この壁面は子供に古代生物を教えるには、実に格好の材料ではないか。

@しかしそれ以外には、少なくとも私にとって、特に興味を引くものは少ない。ので、取り敢えず地下1階に下りた。紀ノ国屋のスーパーやセブンイレブンを覗いた。セブンイレブンでは『日本を劣化させる50代の罪』というデカイ見だしの雑誌が目に入り、面白そうな気がしたので購入し、地下鉄の中で読むことにした。これが結構面白い。

@この雑誌では、50代による若者への無根拠な思いこみやバッシング、価値の押しつけ、主に男性による性犯罪の増加、50代が経営する企業の無謀な暴走などが、それぞれの分野の専門家によって指摘されている。

@ある記事では、20代よりも50代のほうが犯罪を犯しにくいのが世界的な常識なのに、日本はこの逆をいっている、と言及していた。社会的リスクが大きくなり、それに対する心構えが出来ているはずの50代が20代よりも多く犯罪を犯しているのが、この国の現状だ、というのだ。確かにそう言えなくもないだろう。

@彼等が生まれ、育った終戦後の貧困から高度成長時代というのは毎日のように少年犯罪が起こっていた時代だった。しかも今と同じように、ホンの些細な理由で殺人を犯す例も沢山あったという。そんな時代に育った今の50代が『自分の過去どころか現在も棚に上げて、(『若者の異物化』という)誤ったイメージをもとに政策や立法を行おうとしている』(記事より)のは怪しからんという。

@しかし、これらの記事にあるように、今の50代と言うものは、そんなに“罪深い”人間ばかりなのか。そうでもないだろう。20代が巷に言われているように、凶悪な存在ばかりではないのと同じように、50代も“凶悪”で“幼稚”で、“無責任”な人間ばかりではない筈だ。

@確かに犯罪統計数の結果のように、50代のほうが20代よりも多く罪を犯しているのは事実だが、そんな人達ばかりでは決してない。してみれば、この雑誌の特集も、若い世代による『50代バッシング』ともいえなくもない。


@『世代の断絶』といわれて相当久しいが、これからはただでさえ悪い景気が、ますます悪くなる時代だ。何時までも若い世代と年長世代が反目・差別しあっていては、これからやっていかれまい。非常に月並みだが、まずは互いにいろいろな分野で協調しあうことからはじめたほうがいいのではないか。

@…と、雑誌を読んで考えながら東大本郷キャンパスに来た。夏場は建物の間から生える緑が一層ゆたかに濃くなっている。古い建物が未だに残り、古の学問の都を彷彿とさせる。

@ふらりと構内の博物館に立ち寄る気になり、中を見る。あるフロアで、生物学者が各地で採集したイノシシの頭骨が夥しく、また規則正しく並んでいた。実に壮観だ。…こういうとおかしく取る向きがあるかもしれないが、身体の中にシッカリした骨格をもつ動物の骨というのは、みれば見るほど、実に美しく機能的に造形されているものなのだ。眼窩にはちゃんと眼球が入るように円く空いているし、頭蓋には脳がキチンと入るスペースが確保されている。私はこれを一瞥するなり「イノシシ」と分かってしまった。


@さて博物館を一通り見終わった後、継いでだから三四郎池を見に行こうという気がわいてきた。ので、いそいそと出かけて行った。おりしも正午あたりには晴れていた空が、うす鼠色の雲に覆われて、多少涼しげな風が吹き始めていた、そんな時間のことだった。

@数分で三四郎池に辿り着いた。春先とは違い、池のぐるりを囲む林がまるで屋久島か何処かの温帯系密林のように、木々の葉が鬱蒼と茂り、昼間でも相当に薄暗い。おまけに何処からか蚊が飛んできて、左の腕や右手小指をチクリチクリと刺しまくる。周囲を包むスコールの如き蝉時雨。嗚呼…蝉も、今や必死の思いでパートナーを獲得すべく、涙ぐましい呼びこみをしているのだなぁ。

@肝心の池は、最早水面が藻のようなドロけた緑色に濁っていた。“アオコ”が浮いていると見た。春頃にはいた水禽も今や姿はなく、浮島には雑草が茫々と茂っていた。

@池というよりは濃厚な“緑沼”状態と化した夏の三四郎池。何とも言えないミステリアスな光景だ。

@池のほとりで、蝉の子虫の抜け殻3匹分を拾った。あめ色の小さな抜け殻は、おそらく油蝉のものか。前足が蟷螂(カマキリ)のように鎌状になっている。子虫はおよそ7年間、この鎌足で土の中を掘り進んで、地上に出でて、羽化して蝉となったのであろう。

@安田講堂の前に植わっている、枝振りを大きく広げた楠の下に来て、持ってきた本を広げ、ページに目を落とす。春先とほぼ同じように、この大きな楠は、太くて逞しい枝に沢山の緑の葉をつけて、頭上を覆っている、まるで天蓋のように。

@ふと楠の根元に目がやったら、直径1.0cmはあろう穴がいくつか開いていた。アリンコはこんな大きな穴を開けられない。ということは、これは蝉の子虫が羽化する前に地上に出るべく開けた穴に違いない。穴の一つに、さっき三四郎池のほとりで拾った蝉の抜け殻の一つをあてがってみる…。すると蝉のお腹に穴がちょうどはまる大きさだった。やっぱりこれは、羽化直前の蝉が地上に出たあとだったのだ。

@夕暮れが莢かに迫っている。そろそろ正門を出ようとする刹那、油蝉やミンミン蝉とは明らかに違う種類の蝉の声が聞こえてきた。


@…♪おぉ~しっ!つくつくつく…おぉ~しっ!つくつくつく・…おぉ~しっ!つくつく…びよーびよーびよー、じー……。おいおい、暦の上では秋とはいえ、まだ8月の初旬だよ!幾ら何でも出るのが速過ぎるよ…つくつくぼうし君!

@ここん所の暑さも和らぎ、涼しい風が吹いてきたので、つくつくが出る時期を勘違いして、土の中からのこのこ出て来てしまったのだろうかねぇ。普通は今月の中旬過ぎから出るはずなのに、これには仰天した。

@人間といい、天候といい、蝉までも出る時期を間違えるくらい、今年の夏は正に異様で異常なものになっている。これから毎年、徐々に熱帯化していくのだろうか。それを思うと、気持ちが何だかひやりとなる。
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