星人ロロン・第2部(9) [ドラマ・ミニアチュール]
▼惑星ソラリスで発見した、身元不明の男の記憶を解析していた、田茂木茸雄とロロン。モニターを見つめるその2人に、蒼ざめた驚愕の色が浮かんだ。
▼モニターに映し出されたのは、なんと、朝永とドド・アスベンの2人だった!彼等は自分たちよりも先に、ソラリスにやってきて、男に襲いかかり、男の手にしている白い石で出来た玉を強奪し、挙句に彼をドーン!と突いて、ソラリスの海に落とした。
▼一体何の為に、科学者ともあろうものが、この二人が、見ず知らずの若者を襲って、大事にしているものを奪い取るなんて…2人の顔には、呆れと失望と、ドドと朝永に対する憎悪と憤怒が入り混じった感情が浮かび上がっていた。
▼田茂木「何という奴等だ!…これでも科学者か!人間として堕落しきっている!」口元を歪めて、田茂木は2人を罵った。
▼…ロロンが、ふと気付いて男のほうを振り向く。「う、うぅ~ん…」と、男は眼を開き始めていた。
ロロン「眼が醒めたようだわ」
田茂木「よし、頭から装置を外そう」
▼2人して男の頭から、解析装置に繋がる電極を外し始めた。…全て外し終った後、男はむっくりと起き上がった。まだふらふらするらしく、眼差しが多少朦朧気味であった。
▼田茂木は、男に向かって言った。「大丈夫か?いきなり、あんなことをしてすまなかった。君が如何言う人なのか、ボクたちは知りたかったんだ。身元が分かり次第、君の住んでいるところへ帰すつもりだったんだよ」
▼「ボクは…」男は、ゆっくりと口を開き始めた、「如何やら、思い出してきたようだ…ボクの名前は、ジークフリート…地球人との混血のロボット工学者、プーロン忍成博士の手によって作られた、労働用のヒューマノイドだ…」。
ロロン「えぇ?!」 彼女は仰天した。この“ジークフリート”というヒューマノイドは、プーロン忍成の手により、惑星グロテロの彼の研究室から生み出され、つい最近量産化されたばかりの新顔だからだ。
▼「あなたが、新しいヒューマノイドなのね?」「そうだ…」ジークフリートはそう言いつつ肯いた。その眼は灰色を帯びた青い眸であった。
▼「その君が、なぜソラリスにいたのかい?」今度は田茂木が、ジークフリートに聞いた。「大切なものを、誰かからあずかっていたのです。その一つである白い玉を、2人の男に奪われてしまった。後の黒い玉はどこへ行ったのですか」
▼「ここにある」
田茂木はその黒い玉を彼に見せた。彼は眼を見開き、おお、と感嘆の声を上げた。「ありがとう…この玉と、あともうひとつ、奪われた白い玉がないと…あの人を、蘇らせられない!」
「あの人って、誰だ」田茂木が聞くと、
「最上…最上百合子という、地球人だ…私の主人だ」
「なんと!」田茂木の顔色が変わった。
▼最上百合子というのは、田茂木の卒業した大学の先輩の、妹であった。大学時代、彼女が田茂木に心を寄せていたことが、田茂木の脳裡からまざまざと蘇ってきた。彼女は生まれつき、目鼻が薄く、のっぺりしていた。その為に皆から「のっぺらぼうの妖怪」と蔑まされていた。
▼卒業を間近に控えていた時、百合子はある日、家族と共に、遠い惑星グロテロに移住していった。それ以来、何の音沙汰もない。
▼「君は、百合子さんに雇われたヒューマノイドなのか」「百合子さんには恋人が出来なかったので、ご両親が気をきかせて、私を購入してくれたのだ」
(つづく)
▼モニターに映し出されたのは、なんと、朝永とドド・アスベンの2人だった!彼等は自分たちよりも先に、ソラリスにやってきて、男に襲いかかり、男の手にしている白い石で出来た玉を強奪し、挙句に彼をドーン!と突いて、ソラリスの海に落とした。
▼一体何の為に、科学者ともあろうものが、この二人が、見ず知らずの若者を襲って、大事にしているものを奪い取るなんて…2人の顔には、呆れと失望と、ドドと朝永に対する憎悪と憤怒が入り混じった感情が浮かび上がっていた。
▼田茂木「何という奴等だ!…これでも科学者か!人間として堕落しきっている!」口元を歪めて、田茂木は2人を罵った。
▼…ロロンが、ふと気付いて男のほうを振り向く。「う、うぅ~ん…」と、男は眼を開き始めていた。
ロロン「眼が醒めたようだわ」
田茂木「よし、頭から装置を外そう」
▼2人して男の頭から、解析装置に繋がる電極を外し始めた。…全て外し終った後、男はむっくりと起き上がった。まだふらふらするらしく、眼差しが多少朦朧気味であった。
▼田茂木は、男に向かって言った。「大丈夫か?いきなり、あんなことをしてすまなかった。君が如何言う人なのか、ボクたちは知りたかったんだ。身元が分かり次第、君の住んでいるところへ帰すつもりだったんだよ」
▼「ボクは…」男は、ゆっくりと口を開き始めた、「如何やら、思い出してきたようだ…ボクの名前は、ジークフリート…地球人との混血のロボット工学者、プーロン忍成博士の手によって作られた、労働用のヒューマノイドだ…」。
ロロン「えぇ?!」 彼女は仰天した。この“ジークフリート”というヒューマノイドは、プーロン忍成の手により、惑星グロテロの彼の研究室から生み出され、つい最近量産化されたばかりの新顔だからだ。
▼「あなたが、新しいヒューマノイドなのね?」「そうだ…」ジークフリートはそう言いつつ肯いた。その眼は灰色を帯びた青い眸であった。
▼「その君が、なぜソラリスにいたのかい?」今度は田茂木が、ジークフリートに聞いた。「大切なものを、誰かからあずかっていたのです。その一つである白い玉を、2人の男に奪われてしまった。後の黒い玉はどこへ行ったのですか」
▼「ここにある」
田茂木はその黒い玉を彼に見せた。彼は眼を見開き、おお、と感嘆の声を上げた。「ありがとう…この玉と、あともうひとつ、奪われた白い玉がないと…あの人を、蘇らせられない!」
「あの人って、誰だ」田茂木が聞くと、
「最上…最上百合子という、地球人だ…私の主人だ」
「なんと!」田茂木の顔色が変わった。
▼最上百合子というのは、田茂木の卒業した大学の先輩の、妹であった。大学時代、彼女が田茂木に心を寄せていたことが、田茂木の脳裡からまざまざと蘇ってきた。彼女は生まれつき、目鼻が薄く、のっぺりしていた。その為に皆から「のっぺらぼうの妖怪」と蔑まされていた。
▼卒業を間近に控えていた時、百合子はある日、家族と共に、遠い惑星グロテロに移住していった。それ以来、何の音沙汰もない。
▼「君は、百合子さんに雇われたヒューマノイドなのか」「百合子さんには恋人が出来なかったので、ご両親が気をきかせて、私を購入してくれたのだ」
(つづく)
タグ:SF小説
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