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解りあえる・・・日は来るのか、彼等に? [雑文]

@先日、和歌山県太地町で毎年9月に行われる“イルカ漁”をゲリラ的手法で撮影・編集したドキュメンタリー映画
「THE COVE」が、アカデミー賞・ドキュメンタリー賞を受賞したというのは記憶に新しい。

@その前年、この作品はサンダンス映画祭オーディエンス賞、カナダ(HOT DOGS)ドキュメンタリー最優秀賞、シドニー映画祭オーディエンス賞、ブルーフィルム最優秀賞を受賞している。

@太地町は、イルカ漁で彼等を追い込んで捕らえ、捕らえたイルカの一部は水族館などに売っているわけだが、残りはその場で屠殺され、そうして得られた肉を鯨肉の名目で食品業界に売り渡している。

@「THE COVE」が、この漁の問題を映像として取り上げた意義は大きい。日本が“伝統文化”と称して鯨肉を喰らい続けたこと、その鯨肉が本物の鯨肉でなくて実は太地町で屠殺されたイルカ肉である可能性を仄めかしたこと、それらをゲリラ的撮影手法を用いてまで、映像として取り上げた点で、我々列島人の知られざる醜き暗部のひとつが明かされたことは、世界中にさまざまな形で反響を広げたに相違ない。

@そうした日本の醜い一面を明らかにしてくれたことに対しては、「THE COVE」の発案者や監督および撮影スタッフに対して、一応敬意を表したい。が、ここで私が問題にしたいのは、太地町と「THE COVE」撮影陣との間に、きちんとした『対話』と『理解』が得られないまま、撮影側が一方的にこの映画を撮影し製作してしまったことにある。

@早い話が、撮影側は太地町の人々に、自分たちと同じ人間を見出していなかったのだ。つまり、自分たちとはまったく異質の存在として、告発し、果ては人間ではない残忍な何かとして、決め付けた見方をしていたのだ。

@太地町側も太地町側で、自分たちの生活の中に土足でいきなり入ってこられて、自分たちが昔からしてきたことを一方的に「残酷で非人間的な行為」と決め付けられ、意固地になり、激昂しているわけだ。

@こんな彼等の間には『対話』も『理解』(相互理解)もまったくないのは火を見るよりも明らかだ。あるのは対立と憎悪、決め付けられたことに対する被撮影側の怨念だ。

@この映画によって、日本人に「残虐なるサタン」の烙印が押されてしまうことを危惧する。今度大西洋のマグロが禁輸・禁漁になるかならないかが国際会議で決まるらしいが、この世界的な『マグロ獲るのは禁止!』の風潮も、おそらくひとつには、THE COVEが上映された影響の所為かもしれない。

@こういう問題が起こる前に、THE COVEと太地町の人々の間で、話し合いをしようという知恵がなぜ湧かなかったのか。太地町は2007年に国際組織にイルカ漁を指摘されてから、警戒を厳しくし、見学撮影をなかなか許可しない、という状況になっていると聞く。

@その警戒をかいくぐり、撮影製作に成功したTHE COVEの製作者側には、日本人は自分たちと話し合ったってわかるような人間ではない、なんてったって、俺たちの話す言葉を理解できないけだものだから。英語と言う共通語を話せない奴等は、人間ではなくけだもの、という意識がひょっとしたらあったのではなかったか。

@もし、そのような意識を元として、この映画を作ったのならば、私はTHE COVE製作側の人間性を疑わざるを得ない。自分たちとは異質な他者と対面したとき、その他者の中に自分たちと同じ者を見出すのか、それとも排斥すべき対象とみなすのか。そこに、その人間の、ヒューマニティの底の浅い深いが見えてくるのだと私は思う。

@私個人の思いを言えば、自分とは違う他者を見て、あいつらはこうだ、ときめつけ、果ては排斥せんとする精神も、他者に注意された自分たちの習慣の問題点を、俺等の文化なんだから、手前ら口出しするな!とばかりに意固地にほっかむりを決め込む態度も、どちらも肯定することは出来ない。どっちも偏っていて、建設的、進歩的でないからだ。ついでに言うなら、どちら側も、自分のエゴを剥き出しにしているからだ。

@鯨類を食う、食わないの問題以外にも、水銀汚染の問題など、複雑な問題が幾重にも絡んでいるであろう捕鯨問題。この問題について、両者が冷静になって向き合い、エゴの鎧を脱ぎ捨て、互いに対話し、理解点を得られる日は、果たして訪れるのであろうか。非常に難しいことではあるが・・・。
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