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銀河系・明日の神話(2) [ドラマ・ミニアチュール]

●第1章第2話・惑星シエスタへ●

☆鬱蒼たる熱帯系の密林に覆われた、惑星ギラを出発して、はや数時間。昆虫学者・田茂木茸雄とアンドロイドのロロン、それに惑星ソラリスで、2人に命を救われた男性型アンドロイドのジークフリートの3人を乗せたロケット・ガルー号は、彼方に七色に輝く星雲を望みながら、煌く星たちの間を、順調に航行していた。

☆田茂木が、コックピットから見える七色の星雲を指差して言った。

 「ロロン、あれが地球と同じ空気と緑のある惑星、シエスタのある、M9000アテナ星雲だ」

 「アテナ星雲・・・」呟いたロロンの瞳は、うっとりとした気配を浮かべた。「トテモ綺麗・・・」

 「美しい・・・!こんなに綺麗な星雲を見たのは、生まれてこのかた初めてだ!」ジークフリートが感嘆して言った。

☆今、ガルーの乗組員たちの目の前に広がる、紅や青や緑や黄色、紫色などに彩られた中に、青白く眩く光る恒星を幾つか従えた星雲は、えもいわれぬ美しさをもって、彼等を歓迎しているようであった。


☆ガルー号は、速度を上げつつ、その七色の中心へと向かって、全速前進した。惑星シエスタは、七色星雲の丁度真ん中あたりにあり、たどり着くのに4580億光年かかる、と田茂木は言った。「シエスタへは、10回ワープ(時空間短縮移動)すると行ける」3人はヘルメットをし、シートベルトを締めた。田茂木は、ワープ用のボタンを押した。すぐにガルーはワープの体勢に入り、時空間に入っていった。


☆ワープを10度繰り返すと、目指す惑星シエスタは間近だ。やがて、ガルーの眼前に、地球のように海の青と、雲の白の模様が流れる、生命の息吹溢れるシエスタの外観が見えてきた。コックピットに座り操縦桿を手前に引いて、田茂木が後部座席の2人に告げた。

 「大気圏に突っこむぞ。シートベルトをしっかり締めて!」
 「OK、ラジャー!」

☆3人はカチッと音がするまで、シートベルトの締めをきつくした。ものすごいGが彼等を襲う。ガルーは白熱の光を発しながら、シエスタの大気圏に突っ込んでいった。


☆やがて、ガルーは着陸の体勢になり、青い海の只中に浮かぶ白い砂の島にエンジンを噴射して無事に着陸した。

☆ブヮー、という轟音と共に白く細かい砂が舞い上がる。程なくロケットのドアがカパッと開き、そこからはしごがニューッと伸び、白い砂に着地した。そして中から、スキンヘッドの黒尽くめの男、流れるような黒髪の、いかにも美しい、身体にフィットしたスーツを着た女、そして、金髪で緑色の眼をした、これも身体にぴったりしたスーツを着た肌の白い男が降りてきた。

☆自分たちが居る白洲の島は、実は人工の島で、島からは白い橋が東の方角にまっすぐに伸び、その先に、大都会の象徴である摩天楼が聳え立っているのが見えた。

☆田茂木は言った。「あれが惑星シエスタの宗主国、イシュタールの首都、コイモイスだ」

 ロロンとジークフリート:「コイモイス?」

 田茂木:「コイモイスとは、シエスタの共通語・カトナラ語で“永遠の都”の意味だ」

 2人:「永遠の都?」

 田茂木:「何時までも永遠に栄えたいという願いを込めて、イシュタールの人々は、そう名づけたのだ。実は俺も、昔、大学生だった頃、この都市へは何度も訪れたことがあるんだ。初めて訪れたとき、繁華街におじいさんがいた」

☆今から20数年前、初めてコイモイスを訪れた、バックパック姿の若者だった田茂木を見て、親切心をもつそのおじいさんが、町の名の由来について教えてくれたのだ、という。

☆惑星シエスタは、はるか古代よりカトナラという種族の支配する惑星帝国であり、コイモイスは数億年の歴史を誇る、銀河系屈指の古い都である。

☆初代の皇帝・シンタマニは、もともとこの星に住んでいたアジャパラという種族の住んでいた、シエスタの中央にある大陸・イシュタールを完全制覇し、ここに都を立てた。その際、未来永劫栄えてほしいという願いを込め、コイモイスと名づけたという。

☆「アジャパラの人々は、如何なったの?」ロロンがたずねた。田茂木が言うには、「彼等は、初代の王とその軍勢によって、ことごとく滅ぼされた」。

☆「人間型の知的生命体で、アンドロメダ系のエジリカ星団にある、かつては緑豊かで今はクレーターだらけの惑星シッカにいた1種族を起源とするカトナラ族がシエスタに入り込む以前から、この星に住んでいたアジャパラ族は人間と同じような姿ではなく、原始的な海老のような身体に大きな球体の頭を持つ、エイリアンだった。

☆「知能は我々並みで、しかも自分たちで文明を持っていた種族だったため、侵攻してきたカトナラ族に対し徹底抗戦を続けた。が、前銀河暦3500年ごろ、軍備、知略、人員のすべてに勝るカトナラについに敗れた挙句、根こそぎ捕らえられ、結局は料理され、彼等の胃袋に入ってしまった。当時の記録によると、アジャパラ人はそのまま茹でてタレをつけると、トテモ美味だったらしい」

☆ロロンとジークフリートの2人は、可笑しいとも悲しいともつかぬ、なんともいえない顔になった。戦いに負けた上に相手に食べられて滅んでしまうとは・・・。笑ってよいのか、悲しんでよいのか。

☆・・・と、そのときであった。はるか東にあるコイモイスのほうから、人らしき影が歩いてくるのが見えた。田茂木にはすぐに、それが誰だかわかった。近づくにつれ、彼の姿がハッキリ見えてきた。それは、不自然なほどに鮮やかな赤色の、無造作にもじゃけた頭髪をした、赤いつなぎのスーツを着た人物であった。

☆田茂木は、「やあ」と手を挙げた。するとそのもじゃけ頭の人物も「おお」と言って左手を挙げた。如何やら、男は田茂木の知り合いらしかった。それもかなり古い友人らしい。

☆程なく2人は対面し、はははは、と笑いあいながら肩をたたきあい、抱擁しあった。

☆「やー、久しぶりだな、どうしていた?」「君こそ、はるばるここへくるなんて」「僕はわけあって銀河を旅しているのだ」「そうか・・・で、後ろに居る連れは?」

☆「ああ・・・これは僕の優れたアシスタント、髪の長いのがロロン、金髪はジークフリートという」

☆もじゃけた頭の男は、2人に向かって声をかけた。「やあ!お二人さんはじめまして。僕はここコイモイスで天文学の研究所を開いているキメラといいます。田茂木茸雄君とは、地球の理化学研究所で一緒に仕事をした仲間同士です」

☆キメラはやや小太りで、子どものようなあどけなさの残る顔が、もじゃけた頭髪の下にある。

・(3)に続く・

*この物語はフィクションです。実在の人物・組織とはごく一部を除き、関係ありません。
タグ:SF小説
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