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今思えばあれは…。~「神々の黄昏」ラストと東日本大震災~ [独白]

@今思うに、あれは本当に恐ろしい光景だった。


@あれ、というのは、あの3.11に仙台市若林区を襲った巨大津波のこと。TVで放映されたその映像は、「鮮烈」と言うにはあまりに印象が強すぎた。御記憶の方も多々居られるだろうと思う。

@あれよあれよ…と言う間に、田んぼや町やビニールハウスを飲み込んでいった巨大な水の怪物。余りに信じられない光景が目の前で展開される様に、TVの画面から目を離す事が難しかった。

@津波が通り過ぎた後は、それまであった光景が、堆(うずたか)き瓦礫の山々が積まれた、完全なる荒野と成り果てていた。…あれからふた月あまり経ったが、巨大津波が通り過ぎるまでの光景は、未だに私の小さな脳裏に焼き付けられたままだ。

@今思うと、あの光景は…そうだ、ヴァーグナー「ニーベルングの指環」の第3夜「神々の黄昏」のラストシーンとよく似ていた。

@…神格を取り戻したブリュンヒルデが自分を結果的に裏切り、最後はハーゲンに背中を刺されて死んでいった夫・ジークフリートを荼毘に附す炎の中に飛び込んだ後、紅蓮の炎が火力を増して瞬く間に燃え広がり、ヴァルハラをはじめ古い世界の全てを焼き尽くした。やがてライン河が大洪水を引き起こし、「指輪を返せ!」と言って河に飛び込んだハーゲンをも飲み込み、古い世界の全てを一掃し、すべては白紙に帰する…そんなシーンを思い起こさせた。

@巨大な水の怪物が、地上の全てを飲み込み、やがて全てを無に帰してしまう。東日本大震災を襲った津波と、「神々の黄昏」ラストの巨大洪水は、その点で非常によく似ているのであった。物語の洪水は、古い世界を荒廃させたアルベリヒ、ヴォータンはじめ「神々」という名の「愚者」とその子々孫々を、すべて葬ったかわりに、「人間=民衆」だけは「新しい世界を作る主役」として残した。

@然し今度の、震災の津波は、文字通り、全てを飲み込み、破壊した。賢くて、我慢強くて、優しい心根をもつ多くの人々を、情け容赦なくその濁流の中に呑みこみ、葬り去ってしまった。ヴァルハラと違い、「賢者」の多い地が犠牲になったのだ。

@現在、死者はもはや3万を優に超えた事だろう。そして未だに数多い行方不明者の捜索は、続いている。

@愛するふるさとの全てを瓦礫と更地に変え、数多くの人々をも呑み込んだ、巨大津波と地震を起こした大自然の、激烈なほどの挑戦に、生き残った人々は、しかし、復興・新生という名の、応戦を既に始めている。

@ヴァーグナーが実は望んでいたのではないかという、豊かで平和な、新しい世界が、自然の猛威がトコトンまで破壊した東北の地から、誕生することを、心から祈りつつ、自分も懸命に生きていきたい…!
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