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”鏡細胞装置”の機能不全を抱えて生きる。

@猿の脳の中で、鏡の役割を果たす神経細胞が発見された、と発表されたのは、ごく最近のことだ。ミラーニューロン・システムすなわち”鏡細胞装置”、とそれは名付けられた。

@そのあと、人間にも同じ機能を持つ神経細胞群があることがわかり、このシステムが他人や自己の認識や学習にも大きな役割を果たしていることがわかってきた。

@ミラーニューロン・システムは、三つの部位に分かれてついている。頭のてっぺん、前頭葉、視覚を司る部位の近くだ。このシステムは、視覚に関わるこれらの部位連携して、他者や自己の認知や学習や社会的な認知能力の発揮に深く関わっているそうだ。

@このミラーニューロン・システムに重大な機能不全が起こると、いわゆる自閉症(オーディズム)
と呼ばれる脳変異を起こし、他者との意思疎通や、社会的認知能力に欠陥がもたらされるという。もっとも、自閉症はミラーニューロンだけの異常だけで起こるものではない変異と思われるが、このニューロンの変異は、自閉症の発症に大きく関わっていることは、少なくとも種々の実験の結果、間違いないことらしい。

@ある実験によると、笑い顔、怒り顔、黙り顔、泣き顔、びっくり顔の、5つの表情をした人の写真を見せたところ、健常者とくらべ、自閉症の症状が重いほど、ミラーニューロン・システムの働きが脆弱だという結果が出た。

@自閉症は、他者の顔の表情からその心をうまく推測できない。つまり相手の顔から心を読み取ることが苦手という。これはミラーニューロン・システムの機能不全により、齎されているという。つまり、頭の中にある鏡にはじめからひびが入っていたり、曇っていたりしていて、相手の姿や心をうまく映し出すことが出来ないというわけだ。

@だが、そんな脆弱な鏡しかもっていない人々でも、きちんと訓練すれば、曲がりなりにも他者の心が読めるようになり、社会的認知能力があがってくることが出来る筈だ。
(要するに、どんな変異を抱えている脳でも、可塑性はちゃんとそなわっている。それがある限り、不完全な鏡しか持っていなくても、社会的な認知などが少しずつ出来るようになる。ただし、これさえ活性化できれば自閉症が治るというのは早計だ。個々人の脳というのはみんな複雑、千差万別なのだ)

@事実、ミラーニューロンの脆弱さを乗り越えて、社会生活を営んでいる自閉症の人間はたくさんいる。また、サヴァンの例のように、コミュニケーション不全と引き換えに身につけた天才的な能力を発揮して、活躍している人間も多い。

@鏡細胞装置の不全を抱えて生きる人々にとって、社会と交わるということは、非常にしんどいことでもあるが、一方で、鏡細胞装置の不全のない人たちにとっては、彼らと交わることは、脳の多様性、ひいては人間同士の多様性を引き受ける絶好のチャンスである。それは鏡の不全を抱える側にとっても、成長のチャンスでもある筈だ。




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