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夢の断片。 [ドラマ・ミニアチュール]

@『ニーベルングの指環』でヴァルキューレの筆頭として登場する美女・ブリュンヒルデ。後に自身とは甥の血縁関係にあるジークフリートと結ばれ、やがて悪の手にかかり、殺害された夫の後を追って死んでゆく。

@そのブリュンヒルデ、若き頃、娘時代は父親ヴォータンと近親相姦の関係にあった。もしかしたらヴォータンは他のヴァルキューレたちとも、近親相姦の関係を結んでいたかもしれない。古代からヴァーグナーの生きた近世に至るまで、独逸などでは近親相姦はよくあることであった。

@そのブリュンヒルデが、後にジークフリートを生むことになるジークリンデを救ったことで父に罰せられ、「お前は他の男と一緒になるがよい」と、ヴァルキューレの資格と武装を剥がされ、眠らされて岩山において置かれることになる。それを目覚めさせたのが、他でもないジークフリートだった。彼に見出された彼女は最初は拒むが、後に滅び行く運命を背負う英雄の胸に、最後は飛びこみ、「笑いながら死んでいく!」とたからかに恋の成就をうたい、永遠の愛を誓い合う。


@知性による賢さよりも、愛による愚かさを選んだブリュンヒルデ。その愚かさゆえに夫と運命をともにすることになる。が、一つだけ、いまわの際に彼女は美しい行動をした。否、美しくも哀しい行動をした。


@彼女はハーゲンらによる全てのわるだくみを知り、愛の贖罪をこめて、ジークフリートへの思いを叫び、父親らに向かって、「かくなる結果になりしは全てこの呪われたる指環にあり。しかして呪いはすべて成就せり。神々よ、今こそ憩うべし」と叫んで、指環をラインの乙女らに返し、自らはジークフリートを荼毘に付している炎の中に飛び込んで、壮絶な最期を遂げる。

@火葬した彼等の遺骸がすっかり焼けたあと、ライン河は大洪水を起こし、指輪を寄越せ!と叫んだハーゲンらを呑み込んで、ヴォータンなど欲望と暗愚に執り付かれた、堕落した神格者連中が作り上げた「神々の国」は完全に滅亡した。

@ヴァーグナーの『神々の黄昏』のラストでは、ギービヒ邸や「神々」や「英雄」が集うヴァルハラが炎上する、となっているが、自分が考えるに、英雄とその妻の最期を見た庶民達の中で、勇敢で怖れ知らずの者たちが、火のついた松明や武器を手に手に、「ジークフリートの仇をうてぇ!」と口々に叫び、まず大挙してギービヒ邸に押しかけ、そこにいた臣下、使用人たちを片っ端から打ち殺し、ほぼ全員を殺したところで屋敷に火をつけた。みるみる炎は屋敷の全てにまわり、残されたグートルーネ以下、まだ生きていた一族を焼き殺していった。

@群集たちは今度はヴァルハラに押しかけ、やはりそこにいた神々や英雄たちを、これも徹底的に打ち殺し、ホトンドを倒し終わったところで、今だ火のついている残りの松明を城内に放った。見る見るうちに火は燃え広がり、ヴァルハラはあっという間に焼け落ちた。

@ヴァルハラの火災による崩壊から、命からがら逃げ出した者がいたかもしれない。“火使いの神”ローゲと、ブリュンヒルデの妹たち、三つ下のヴァルトラウテと、一番下のロスヴァイセは、辛くも生き残った。・・・以上のことだったのではないか。

@この2人のヴァルキューレの生き残りと共に、安全な森の奥深くに落ち延びたローゲは、森の奥にある洞穴に彼女等と共に入り、彼女等を特殊な秘術で眠らせ、勇敢なる者以外は誰も入って来れないように青い火を張り巡らせ、洞穴の奥深くに隠した。・・・それはヴォータンがブリュンヒルデを眠らせ、岩山に火で囲って勇敢な奴(その勇敢な奴だったのがジークフリートだった)以外は通さなかった術と同じだった。

@こうして幾星霜の年月が流れ、何と、21世紀になった。例の岩山に眠らされた二人を囲った火はとっくに消え、かぶせられた楯は風化が激しく、表面がボロボロになっていた。

@丁度その頃、考古学の調査隊が、この謎の岩山を訪れ、調査の真っ最中であった。ふと、一人の研究員が、ボロボロに表面が朽ち果てた、二つの楯を見つけた。楯はカタカタ、と微かな音をたてていた。

@調査員が各々の楯をはずすと、中からそれぞれ古代の鎧兜で武装した、明らかに人間と思しい姿が現われた。調査員がおそるおそる鎧兜を外した。すると・・・!
 「おぉ~!」

@美しく、艶めかしい乙女2人の姿が現われた。
 「こりゃ・・・まるで生きているようだ!」もじゃけた髪の毛をした、一人の調査員が乙女たちの顔に自分の顔を近づけると、なんと!微かなる息遣いが。

「マジで生きてる!」 桜色に染まった可愛らしい唇が、小刻みに震えているではないか。調査員の胸が高鳴った。

@たしかヴァーグナーの楽劇では、英雄が乙女に口付けして目覚めさせるんだったな?ややや・・・ちょっとこわ~いけど、やってみよう!といって、目の前の一人の乙女に接吻した。

@ヴァルキューレには珍しい濃い栗色をした髪の、その乙女は、ゆっくりと眼を開いた。そして静かな声でこう言うのだった。

 「・・・私を目覚めさせた人は、あなた・・・?」 その眼は南の海のように、綺麗な澄んだ青色をしていた。


@調査員は、その眸の美しさに、たちまち魅了された。そしてたずねた、「君の名前は?」。

@乙女は答えた、「ヴァルトラウテ」。 


@そしてもう一人の乙女も…。「こっちも、気がついたようだよ!」 プラチナ・ブロンドの綺麗な長い髪に、綺麗な緑色の眸がこれまた印象的な、可愛らしい少女だった。少女は“ロスヴァイセ”と名乗った。

@かくして、2人のヴァルキューレは、21世紀の人間によって、永い眠りから醒め、彼等と当分の間、生活を共にする事になった。


@この物語の続きは、何れの機会にか、紹介することにしよう。(このエントリー終わり)
タグ:伝奇
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