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歴史への態度とリセットの必要性。 [雑文]

@10月23日の朝日カルチャーセンターの講座。この日は作家・島田雅彦氏と脳科学者・茂木健一郎氏との対談、名付けて「脳と狩猟」。

@話題は現代の日本文学界の低学歴化から始まり、デジタル金融業界の功罪、退廃と滅びの話題など、四方八方に飛ぶ。島田氏の何処かアイロニーの利いた話が非常に面白かった。


@その中で、頭に残っている話と、それについての感想をここに書き記す、記憶のままに。間違いあれば、何卒お許しを。


@島田氏の話から。今の日本で流通している貨幣のうち、割合にして0.02%の「ニセ札」が含まれれば、日本経済は破綻する。つまり、金額にして200億円程度のニセガネが出回っていれば、この島国の経済は危ないというわけか…。う~ん、ひょっとしたらこれは本当かもしれないぞ?バブル崩壊以来、何時まで経っても経済が回復しないように見える、ということは・・・ニセガネがでまわり、徐々に経済が破綻しだしているのかもしれない。…。

@日本文学界の低学歴化ということだが…。如何も今出回っている「大衆文学」の作家の作品には、個人的にはとんと興味がない。ゲーテのように至高の精神を極めているわけでもなく、セルバンテスのように不屈の精神が脈打っているわけでもない、ましてや漱石のように鋭い批評性が見られるわけでも無さそうな、今の文学界。

@今の日本に、安部公房のようなシュールな持ち味ながら、世界を魅了する作品を生み出せる人達は果たしてこれから出て来るのだろうか。

@茂木氏の話から。これまで脳ブームを批判していたが、この間田原総一朗氏と会って、田原氏が革命の為の脳ブームといわれていたことにハッとさせられたこと。R.シュトラウスの描いた楽劇「薔薇の騎士」に描かれたようなハプスブルク帝国の衰亡と退廃、そのようなことを日本はしていない、未だに高度経済成長時代の幻影を追い掛けている。その幻影ということについて、ある一つのブームが思い起こされた。

@それは最近、世に流行った昭和30年代レトロブームである。要するにあの頃のノスタルジーに浸りたいという気持ちがそんなブームを生んでいたようだが、昨日の対談を聴いて思うに、あれも一種の高度経済成長時代の幻影と、もうひとついうなら、残照を追いかけ続けている姿なのかもしれない…。それに脳ブームについても、今の脳ブームは田原氏の言う所の「革命」に繋がっているとは、如何しても思えない。…少しは繋がっているのかな?

@それと連動して思い起こされるのが、質疑応答タイムの最初に、茂木氏が答えとして言われたことだ。

@独逸はナチス(NSDAP)政権時代の忌まわしい過去と(真っ直ぐ)向き合っているのに、同じように忌まわしい過去をもっているはずの日本は、その過去と向き合っていない。これは本当にそうとしか言い様がない。何か、その真実と向き合うことを、心底恐れているとしか言えない。

@これを聞いて後から思うに、たとえば、南京で大虐殺をした、731部隊が捕虜を使って人体実験をして、その残党が医学界にいる、などという厳然たる歴史の「真実」があるというのに、それと真剣に真っ直ぐに向き合おうとしていない。人間、真実と向き合うと1度ならず、何度でも“滅びる”とも茂木氏は言われていたが、それが歴史への態度にも必要なのではないかとも思う。

@退廃しきれない、歴史に向き合えない、ということは、“滅び”を怖れ、“リセット”することを怖れている、ということの何よりの証しなのかも知れない。

@同じく質疑応答タイムで、島田氏が「日本は1度、滅びた方がいいんですよ」との鶴見俊輔氏の言葉を紹介されていたが、ここまで閉塞しているなら、1度大きな「滅び」を経験した方がいいのではないか(滅びのあとで、復興があるやなしやの別なく)。

@焼け跡から立ち上がり、経済大国となり、それから60余年が過ぎた今日、もうそろそろ大きなリセットの必要性が出て来たのではなかろうか。一巡りしたことだし。
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