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夏は過ぎ行く [雑文]

@散歩がてら、都内某所の木々が沢山ある場所に出かけて行った。


@ふと見かけた、太い楠の根元に、穴がいくつもあいていた。


@ぽつぽつと、ぽつぽつと。


@私は楠の幹から伸びた、大きな枝の表面に、何かがついているのを見た。蝉の子の抜け殻。


@琥珀色をした、土の中でよく動いた蛹は、時期が来た時、あの穴から出て来て、殻を脱ぎ、成虫の蝉と生まれ変わる。

@幼虫から成虫へと羽化し生まれ変わった時、蝉はこの先待ち構えている運命に、その小さな神経のこぶにすぎない脳で、思いを馳せているのだろう。


@蝉は己の運命をちゃんと知覚しているから、声を絞るように、高く激しく、求愛の唄を歌うのだ。

@残り少ない小さな灯火の生命を燃やし尽くして、おのれの血を継ぐ分身を、置いていく為に。


@都内某所の木々があるあたりには、油蝉やミンミン蝉に混じり、ちがう蝉も土から出て来て、殻を脱いで、謡い始めた。

@おぉ~し、つくつく…おぉ~し、つくつく…。 つくつくほうしが、うたいはじめた。



@蝉は懸命に、力の限り鳴いて、やがて土に返る。そしてこの夏も、河のゆるゆると流れるように、過ぎ行く。
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