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生き物と等価な眼差し・「プロフェッショナル 仕事の流儀」動物園飼育員・細田孝久

@以前、東京都で役所に届け出をせず、無断で蛇を大量に飼っていた男が逮捕された。男のペットの蛇が逃げ出し、近隣の人に被害を与えた、というのである。驚くべきことに、この蛇「東部グリーンマンバ」という南半球原産でコブラ科の猛毒蛇であることがわかった。

@さらに数週間後、この蛇騒動、今度は上述の男がペットとして蛇を購入していたショップの経営者が逮捕される、という事態に発展した。調べによると、この経営者は「蛇はアラブから大量に輸入していた」と供述し、また「当局にバレるとマズいから毒蛇を冷凍庫でカチンカチンに凍らせて殺した」とも供述している。

@自治体の許可なく毒蛇を飼っていた男と、この男が蛇を購入していた店の経営者・・・二人に共通するのは動物を「単なる愛玩物」=「モノ」としてしかみない、きわめて貧相で無慈悲な精神的姿勢である。

@毒蛇であれ何であれ、生物は単なる「モノ」ではなく、また人形やぬいぐるみのような「愛玩物」でもない、『生命体』として我々と等価の存在価値を持つ存在なのである。我々人類と同じこの地球の上で生きる仲間なのである。

@これら生物をモノとしてしかみない人間がいる一方で、生き物の視線に常に降りて、彼らの生に寄り添う人がいる。

@今週火曜日(08/10/07)にNHKで放映された『プロフェッショナル 仕事の流儀』に登場された動物園飼育員・細田孝久さんである。

@番組を視ていて、童謡でおなじみの原始的な猿・アイアイとしっかり目と目を合わせる細田さんの姿が深い印象として刻まれ、今も脳の片隅に残っている。

@上野動物園に勤務している細田さんは一日中、動物たちの体調を看る。毎日そうすることで、動物たちの体の調子が、きょうはどうなのか、いいのか、わるいのか、がわかるという。

@細田さんが面倒をみる生き物たちは、絶滅危惧種であるアイアイをはじめ、まだよく生態が詳しくわかっていない生き物たちが多い。

@あるとき、アイアイと同じマダガスカル原産の灰色ジェントルキツネザルの、一匹の雄の個体に異常を発見した。何だか脇の下にある乳首が腫れているらしい。雄ゆえなのか、妊娠の兆候はみられず、後日、その雄を調べてみたら脇の下から膿が出た。しかし、その膿は雌のミルクと同じものだった。このように不思議な生態を示す生き物たちに、細田さんは毎日向き合っているのである。

@今年8月、南米原産のマタコミツオビアルマジロが、赤ちゃんを産んだ。この動物園では無事に育ったアルマジロは体重が80gを超えていた。ところが、今度産まれた赤ちゃんの体重をはかってみたら、80g以下だった。細田さんは24時間、赤ちゃんが自力で母親のミルクを飲むまで寝ずに待った。人工飼育だと、その動物の野生のある部分が失われてしまうと危惧しているからだ。

@制限時間が近づいても赤ちゃんは母親のミルクを飲もうとしない。万事休すと思われたその時、制限ぎりぎりになってようやく、赤ちゃんが母親のおなかに潜り込んで、ミルクを自力で飲みだした。ホッとする細田さん。体重をはかったら、82gを超えていた。みんなホッとした・・・。

@細田さんは、番組の中で「野生で生きている動物は滅びていってしまう、私たちの役目は動物たちをお客さんに見せて、そして(次世代に)残しておくこと」たしかこのように言われていたかと思う。

@絶滅危惧種「レッドデータブック」に登録されている野生動物は年々、その数を増やしている。つい先般、珊瑚の一種「アオサンゴ」までが「レッドデータブック」に登録された。これは沖縄の海にその大群落が確認されたばかりである。この珊瑚や、他の絶滅危惧種に登録された地球上の生物たちにたいして我々人類一人一人が多少なりとも、責任を持たなければならぬ時代が到来したのかもしれない。

@動物園では結構な数の動物が死んでいるのだという。細田さんはその死に出会う度に、やりきれなさ、無力感を感じるのだという。
 「もっと手を尽くしていれば、死ななかったかもしれないのに」

@それでも細田さんは、動物と同じ気持ちになって、彼らの面倒をみることをやめない。それは彼らに対する慈しみの心の深さの現れである。彼らと自分は、この地上に生を受けている者同士だという自覚の、底知れぬ深さである。
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Kimball

今回もしっかり予約録画しており、観ました!!
いやあ、アルマジロの赤ちゃんがお乳を飲んだときには
やった!と心の中で喝采してました!!
(目もウルウル...)\(^o^)/
by Kimball (2008-10-11 17:04) 

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