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銀河系・明日の神話(3) [ドラマ・ミニアチュール]

●赤い縮れ毛の男●


★田茂木と挨拶を交わした赤毛の天然パーマ男は、銀河系外宇宙を専門に研究している天文学者・キメラ博士である。

★キメラは田茂木とは、地球の理化学研究所時代の同僚同士であり、田茂木が銀河系の生命のある星に生息する昆虫の研究に専念するべく研究所を去る際に、選別として惑星エリーに棲むという珍蝶「モルディカヤ」…それは地球に棲むゼフィルス属の蝶によく似て、金属のように輝く緑色をしている蝶である…の標本を送った人物である。

★キメラの趣味は田茂木と同様、子供の頃からやっている「昆虫採集」であった。田茂木とキメラは、つまりは同じ「虫屋」であったのだ。幼い頃から田茂木とキメラは、おのおの地球に残されている、今はごく僅かな緑の世界を、わくわくする好奇心の塊となって駆け回り、前者は蝶を、後者はツノゼミ類を採集し、それぞれの生態や性質、特徴について、自ら自然に学んでいった。

★やがてキメラは天空の星々に魅せられていき、宇宙の研究に没頭するようになり、ツノゼミ類の採集は趣味として続けている。一方田茂木は、蝶の採集と研究にこだわり、宇宙の中の、生命の存在する全ての星に棲む蝶類を研究していくのだと志し、惑星昆虫学者になる道を選んだ。


★研究所時代から仲の良かった旧友の元気そうな姿を見て、田茂木の顔は喜びの心ゆえにほころんでいた。頬が薔薇色に輝いている。その様子を見つめているロロンとジークフリートの、二人の人造人間も、彼等の様子を見つめて、喜色をそれぞれ、顔に浮かべて見つめていた。


★「…で」と、キメラは口にし、そのあとこう続けた「…オレがお前にプレゼントしたあの標本…今も、持っているのか?」

★田茂木「ああ…でも、生憎地球の実家に置いてきてしまった。でもオレとお前の友情の証、記念碑として、ずっと大事に、オレのパソコン机の上に飾っておいてある」

 キメラ「で、その蝶は、今も美しく輝いているかい?」

 田茂木「ああ…今も神秘的なエメラルドの光を、オレの机上で放っている…オレは何か大きな仕事をするたびに、お前から貰ったあのモルディカヤの羽根の光を見つめて、決意を固めてから仕事に取り掛かるのだ…今度、オレはあの蝶のふるさと、惑星エリーへと向かう。エリーに行くと決めたとき、モルディカヤの光を見つめ、よし、蝶よ、お前の仲間たちの棲む、あの緑深き森の惑星へと、オレはこれから向かうのだ!と。でも、いまそこにいる男…アンドロイドだが、大切な宝物をなくしたというので、これからその宝物を探しに出かける。エリーはその後にでも行く」
 
★田茂木は、ロロンのすぐ横に居るジークフリートを指して言うのであった。

★その時、キメラの顔に二つついている、ビーダマの如く透き通った薄緑の眸に、深く哀しげな光が宿った。そして、こういうのだった。

 キメラ「後でエリーへ行く…って?あそこへは今、行かないほうがいいと思う」

 田茂木「何故?何かとんでもない事が起こっているのか、エリーで?」

★キメラは、大きく頷いた。赤毛の無造作な天然パーマの乗った童顔を、哀しく曇らせて、頭を縦に振った。「教えてくれ!いったいあの星で、何が起こっているのかを」田茂木はキメラに迫った。

★彼等の会話の様子をずっと見ていた人造人間のロロンとジークフリートは、エリーに異変が起こっていると聞いて、とても大きな不安にかられた。

 ジークフリート「何が起こっているのだろう?」

 ロロン「解らないわ…解らないけれど、きっととんでもない事が、エリーで起こっているのだわ!」

★やがて、キメラが口を開いた。それは、腰が抜けるほど、驚くべきことであった。

[(4)に続く]

*この物語はフィクションです。実在する組織・人物とはごく一部を除き、関係ありません。
タグ:SF物語
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