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薔薇と蒲公英 [詩作]

整えられた庭に咲く、

女王のような艶姿の薔薇。


深い赤から清楚な薄桃色、純潔の白まで、

いにしえの貴婦人の如き気品に溢るる。


我等生きとしいける者たちの、

依って立つ大地に根を張り、

天空より別け隔てなく照らす日の光を浴びて

誇らしく咲く、庭の薔薇。


しかしそんな庭の一角に、

様々な顔の青草生ゆる処あり。


歓びに打ち震えてか、

眩しき太陽の姿形を

そのままうつしたかのような

黄色に輝く蒲公英(たんぽぽ)の姿。


華やかあでやかな薔薇の姿も

麗しいとは思うなれど、

地べたの草叢に咲く黄色い汝(なれ)をこそ

我はまことに美しいと思うなり。


薔薇よりも深く根を張る汝の実在を、

我はまことに、いとおしいと思うなり。


やがて薔薇は萎れ、醜く茶けた花がらを遺す。

その根元が膨らみ、中にまた新たな生命を宿している。


蒲公英は萎れたあと、細い茎を長く高く伸ばし、

天辺にふわりとまるく、軽い綿毛をつけ始め、

風が来て綿毛を飛ばしてくれるのを、

心躍らせつつ、しかし静かに待っているようだ。


春の日は、地上を等しく照らし、

緑萌える庭は、躍り出すように輝く。


大地に根を張りて生きる者たちは、様々なれど、

土塊の上では等しく並びたり。


天空は何処までも澄みて青く、

花々は溌剌と咲き薫る、


薔薇も、そして、蒲公英も。


(2008/05/30)
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