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月夜の蟹 [詩作]

 青黒い 空間に 冷たく 白く 浮かぶ まるい月

 
 白い 優しげな 光を 青緑色の 澄んだ 水面に 映している


 ほかりと 浮かび上がる 影 ひとつ

 
 朱赤をした それは はさみ手を もつ 蟹 ひとつ

 

 
 白く 冷たい 月を 見上げて 彼は 嘆く

 
 あの 月の 傍まで 行きたい
 
 
 出来る ことなら 光の 速さで


 けれど うつつには 私は プカリ プカリと

 
 水面に 浮いて いるだけさ


 
 せめて 命尽きて 純なる 魂だけと なるなら

 
 月の もとへと 行けるだろう


 月の 乙女に 初めて 逢えるだろう

 
 恋の 告白を する だろう



 青黒く 広がる 宇宙の 空間に 

 
 月は きょうも 冷たく 浮かんでいる


 

 水の上には 何時の間にか


 蟹は いなく なっていた

 
 朱赤をした はさみ手 だけが

 
 水面に プカプカ 浮いていた


(2008/07/20)


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光の雫 [詩作]

 まだ裏寒い街並みの

 路地の真中に立つ時に

 とても暖かい橙色の

 明るいオビがみそらから

 めぐみのように降りてきます。

 
 光のオビを見つめると

 細かい小さい粒たちが
 
 まるで水の雫のように
 
 静かに早く地上に落ちる。

 
 落ちた所がポカポカと

 恰も春の土のよに

 次第にぬくんでまいります

 生気を戻してまいります。

 
 青い青いみそらから

 白く眩しいお日さまの

 降らすやさしい光のオビの

 雫が春を教えてくれる。

(2009/02/01)
タグ: 詩文
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夏草は揺れる [詩作]

夏草は揺れる。 陽射しと生暖かい風に吹かれて。

モヤモヤと蜃気楼の立つ向こうに、輪郭を波打たせながら立っている大きな楠。

その足下に思いきり伸びる、青々とした、しかし乾いた夏草。


澄んで抜け亙るスカイブルーの天空、

真ん中でがっと光り照らす、午後2時の太陽。


人々は烈日が齎す、炎熱地獄の釜の中。

茹だるような熱気の中で、気を失いそうになりつつ、往来を行く。


夏草は揺れる。烈日の光を浴びて。

何時来るか分からぬ、天空の慈雨を待ち続け。
タグ:雑草 猛暑
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徒然なる思い~自戒~ [詩作]

☆いろんな人達と仲良くしていくこと、キチンと節度をもって付き合うことは、我が人生にとりてもっとも芳しきことなり。


☆されど、親しき中にも礼儀を弁えず、馴れ馴れしく振る舞いしなら、必ず友の心証を損ね、彼と我との間にまことの友情を育む事は出来なくなる。自戒せよ…常に。


☆ネットのお蔭で、半径50m以上のところに住んでいる人とも、ウェブを通じて意思疎通するは自在に出来得れど、礼儀と節度が余計に要る。不注意な言葉遣いで、相手を知らずに傷つけ、せっかくともりし友愛の灯も消えるなり。また自戒せよ。


☆兎にも角にも、この御時世、自戒すること、猶多し。


・・・………・・・・・………・・・・・………・・・・・………・・・・・

☆昨夜は寝苦しくなく、よく眠れたり。然るに今日目覚めて外遊すれば、真夏の熱波が蒸気の如く、五体を包む。


☆脳髄はカオスとなり、ニューロンの連絡網は今にもズタズタとならんとするか。斯かる時こそ塩と水の迅速に五体に注がれたり。


☆流れる滝、砕かれたる氷、冷えきりし大気。清涼飲料水。真夏の日、これらを我等は口に含み、身に浴び、命を蘇らせる。


☆時世の激動も、氷室に入りぬれば、一時に忘るる。

…………………………… 


☆ポーランドにあると聞く、ヴィエリチカの岩塩坑の中に残る、聖書の物語のレリーフは、岩塩のいわかべを坑夫が祈りを込めて彫りしものとや。


☆ややもすれば命を落とすほど、危険な坑内作業には、神への祈りは必須となりぬ。心の平安と、神の守りと。


☆蟻巣の如く複雑な坑内。聞けば地下300mとや。


☆その昔白き黄金と称えられし岩塩を、坑夫はその日の働きの報酬として貰いき。


☆黄金の礼拝堂。嘗てポーランド黄金期、岩塩が齎(もたら)したる富によりて作られしと聞く。

☆されど…岩塩の坑内に素朴で切ない祈りを込めて坑夫が彫りし、聖書の物語ほど、我が心を打つものはなし。


☆塩の結晶。水晶。しろくて美しき地面の宝物。されど塩は、水気を吸うなり、無残に崩れる。


☆そのさまに、命の儚さの影が2重に写る。


★…★…★…★


☆黄色で透明で透き通る琥珀に、とぢこめられた虫たちよ。


☆御身が生きた時代の光景を、御身がいまわのきわの思いを、我等に語れる言葉あるならば…うたのあるならば、きかせたまへ。

☆琥珀の中で死に絶えながら、永遠の生を生きる虫たちよ。


○・・…・・○・・…・・○


☆真夏の陽射しがまともにがっと照らし、蝉はいよよ土より出でて幹に上り、蛹の皮を脱いで歌い始める。

☆今年は出るのが少し早いようだ。炎熱に茹だる気分を増す油蝉のうた。間もなくミンミンゼミも唄い始めるだろう。


☆茹だりし人々、青い空、高く盛り上がる雲、暗緑色に濃くなる木々。正に天道を呪うの時は来ぬ。

もう、あの…。 [詩作]

 もうあの喫茶店には行かない。

 出されたエスプレッソが、

 とてもまずかったから。

 
 もうあの薬屋には、行かない。

 意地の悪い、店員がいたから。


 もうあの大学には行かない。

 教授陣が、薄っぺらだから。

 
 もうあの本屋には、行かない。

 これは!と思う本がないから。

 
 如何やら、今居るこの場所には、

 私の心安らぐ、

 半径50㎝ほどの世界が、
 
 全くないようだ。


 ここは疲れた。

 明日、違う場所に移ろう。

 そこに、きっと!

 私の安らぐ場所がある。

 (2008/06/24)
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湿れる涼風 [詩作]

湿れる涼風 そよと吹き

雨を呼ぶ龍 やって来る

からりとした晴れは過ぎ

再び湿れる日々は来る

薔薇と蒲公英 [詩作]

整えられた庭に咲く、

女王のような艶姿の薔薇。


深い赤から清楚な薄桃色、純潔の白まで、

いにしえの貴婦人の如き気品に溢るる。


我等生きとしいける者たちの、

依って立つ大地に根を張り、

天空より別け隔てなく照らす日の光を浴びて

誇らしく咲く、庭の薔薇。


しかしそんな庭の一角に、

様々な顔の青草生ゆる処あり。


歓びに打ち震えてか、

眩しき太陽の姿形を

そのままうつしたかのような

黄色に輝く蒲公英(たんぽぽ)の姿。


華やかあでやかな薔薇の姿も

麗しいとは思うなれど、

地べたの草叢に咲く黄色い汝(なれ)をこそ

我はまことに美しいと思うなり。


薔薇よりも深く根を張る汝の実在を、

我はまことに、いとおしいと思うなり。


やがて薔薇は萎れ、醜く茶けた花がらを遺す。

その根元が膨らみ、中にまた新たな生命を宿している。


蒲公英は萎れたあと、細い茎を長く高く伸ばし、

天辺にふわりとまるく、軽い綿毛をつけ始め、

風が来て綿毛を飛ばしてくれるのを、

心躍らせつつ、しかし静かに待っているようだ。


春の日は、地上を等しく照らし、

緑萌える庭は、躍り出すように輝く。


大地に根を張りて生きる者たちは、様々なれど、

土塊の上では等しく並びたり。


天空は何処までも澄みて青く、

花々は溌剌と咲き薫る、


薔薇も、そして、蒲公英も。


(2008/05/30)
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5555. [詩作]

如何せん、いかんせん、緑は萌えれど、心はなへたり。


胸に希望の灯火点かず、思いはただ濡れる地面を


這うばかりなり、はうばかりなり。



今日も明日も、灰色の雲が青空を覆い隠し、


暖かな太陽の光をも、見せないようにしている。



人は命の力をドンドン弱め、

先の見えない世を、ただただ、さまよっている。


空の灰色は次第に鉛色へと移り、

大粒の水滴を地面に叩きつけ始めた。


ダダダダダダダダ・…!ダダダダダダダダ……!



雨が…雨が…あめが…家の屋根を打ちつける音が

反射して耳に入って行く。

機関銃の連続砲撃の如く。


アスファルトの道も、青葉の光る初夏の公園も、

雨の機関銃砲撃を、もろ浴びして、

濡れた漆のようにしっとりとつやを増す。


ダダダダダダダダ・…!
ダダダダダダダダ・…!

怒れる如く、激しい雨が、激しく強く、地を叩きのめす。


豪雨に打ちのめされるのは地面だけにあらず。

人の心も打ちのめされて、

青菜のように萎れたり。


嗚呼台風は近づけり…。

(2008/05/12)

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五月雨幻想 [詩作]

雨露で緑がしっとりと濡れ、緑の色が冴えて息づく。

空をば見れば、陰鬱な鉛銀色の雲の固まりが、その上にある澄める青空を覆い隠している。

花壇の雛罌粟は、白い露にあたったせいか、朱や橙や白のこうべをたれて泣いている。

町に吹く風は、重たい湿り気を含んで、身の回りに張り付く。

今、鉛のように重たい懊悩を抱えて、我、三次元の中空に、ただひとり立つ。

空はますます重い鉛色を増し、降る雨粒はいよいよ大きくなり行く。

心中に鉛を抱えたまま、中空に一人浮く、我が苦しみを誰が知らんや。

(08/05/10)
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智慧の実 [詩作]

今、私は木の実を食べている。

その実は、しかし、決して甘くは、ない。

一口食べるとひどく苦い。

口の中がビリビリと痺れ、唇が恐ろしく大きく腫れ上がる。

仁丹よりも、キニイネよりも、更に、さらに苦い。

 

周りの人々は、みんな熟しきった桃のように、

甘く酸っぱい香りを辺り一面に漂わせる木の実に

いっせいに手を出して、これまたうまそうに、

むしゃむしゃとかぶりついている。

 

私もあの甘い木の実を食したいと

思うことしきりなれど、

あのあまい木の実を食べた人たちのその後が

とてもよくないことになっているのを

南からやってきた機織り雀から聞かされているので、

私は未だ、食べずにいる。

 

やがて、

あの甘酸っぱい桃のような香りをただよわせている実を

食べ続けた人々の中から、

惚けたようになったり、

あるいは他の人を虐げようとする

一群が現れた。

 

そのとき、私の肩にとまった機織り雀が

耳元でさやかに、こう囁いた。

「みただろう? あの実は人間を、だめにしてしまう、毒の実なのだよ。

「人間から考える力と、生きる力を奪ってしまう恐ろしい毒の実なのだ。

「あの実を決して食べてはいけない」と。

 

やがて、その毒の実を食べ続けた人々は、

みんなして、呆けたようになってしまった。

そして、そのうち、痩せ細って倒れ、そのまま、2度と起きてこなくなった。

 

仁丹よりもキニーネよりも、苦い苦い、木の実を食べ続けていた

私の頭と全身は、しばらくすると、

おお・・・なんと、不思議なりや!

聡明なる智慧が、あたかも澄み切った泉のようにわき溢れ、

日々眼にするすべての中に、密かに秘められた何かを

見つめる知力と、

何者にもゆるがせに出来ないほどに、

力強く生きる力がわき上がってきた。

 

それと同時に私の口の中は、

痺れるほどだった苦みが、

ほんのりとやわらかく、濃厚な甘みにかわっていったのだ。

まさに甘露の味わいだ。

 

機織り雀がまた囁いた、

「君が食したのは、本当の、智慧の実なのだよ」と。

(2008/04/12)


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