星人ロロン(7) [ドラマ・ミニアチュール]
○生身の人間でなくても、愛する対象にしたってよいではないか…。ロロンのこういう主旨の発言に、朝永は一瞬仰天したが、すぐに、薄笑いを浮かべて、こういうのであった。
○「それこそが、変態の道なのだよ、それも非常に模範的な変態のな。ロロン君」
○「変態の道だと?仮令人造人間相手でも、愛を捧げることが変態ということか!」今度は田茂木茸雄が、つっこんだ。朝永は、胸を大きくそらし「その通りだ」といった。そこには勝ち誇ったような、驕り高ぶったような、とにかく、目の前にいる相手を見下しきったような根性が見え見えだった。
○田茂木は朝永に、向かってこう言った。「あなたがそういう、人間の多様性を否定し、見下すような心を持っているとはつい今しがたまで知りませんでした。金輪際、私はあなたのもとを訪れることはないでしょう。同じ昆虫愛好家だったから、多様性に理解のある、よい人だと思っておりましたのに…残念です。もう2度とお会いしたくありません」そして、ロロンにはこう言うのであった。「こういうオヤジと喧嘩しても、ろくなことはない。あんなのに何を言われても気にしてはいけない…さぁ、帰ろう。僕等の巣へ」
○二人は朝永のもとを去って行った。一人残された朝永は、拳を固く握り締めていた。
☆ ☆ ☆ ☆
○それから数日経ったある日のこと、ロロンは田茂木の蝶採集の手伝いをしていた。お花畑が一面に広がる緑の人工惑星で、捕虫網を手にして、田茂木と共に、見たこともなく、図鑑にも載っていない蝶を捜していた。
○あるとき、ロロンの目の前に、不思議な紫色のはねをした、ひらひらと舞うものが、顕れた。ロロンはばっ!と素早く網を振った。果たして、その紫のものは、首尾良くロロンの捕虫網の中に入った。
○ロロンは、大急ぎで田茂木のもとに紫のものを捕まえた網を持っていった。田茂木が、早速網を改め、その紫のものを掴んだ。それを見た田茂木の表情に驚愕の色が走った。おぉ~!彼のとんがった出っ歯がちの口から、感嘆の声がもれた。
「これは…紛れもなく、銀河じゅうの蝶好きが探して止まなかった、幻の蝶だ!」
「何という名前の蝶?」
「ムラサキマダラトリバネアゲハ」
「発見例がこれまで、世界に2例しかない、貴重な蝶だ。我々で3例目だ。早速学会に報告だ」
○その時だった。ムラサキマダラトリバネアゲハが、パタパタと羽根を動かし、リンプンを飛ばした。あっ!田茂木の眼にそれが入ったらしく、彼は身悶えして苦しみ出した。「田茂木さん!シッカリして!」ロロンは田茂木の顔をみた。顔面に醜く紫がかったこぶが出来、地が噴き出していた。グアぁ~!と田茂木はどす赤い血を顔面から大量に流しながら、やがて動かなくなった。
○「田茂木…さん?」ロロンは、田茂木をひっしでゆすったが、ピクリとも動かない。胸に耳を当ててみた。果たして、心臓は見事に止まっていた。呼吸も停止していた。それでも彼女は彼の胸に手を当て、心臓マッサージを試みた。しかし、彼は完全に氷のように冷えきった肉の塊となっていた。田茂木は、絶命した。
○ぎゃー、というロロンの悲鳴がお花畑じゅうにコダマした…。ロロンは泣き続けているうちに、意識が混濁していった…。
○気がついた時には、田茂木の家のベッドの上だった。田茂木が心配そうに「どうした?酷くうなされているようだったが…」。
○…あぁ、茸雄さんは、生きている!今のは夢だったんだ…!ロロンは、眼を見開いて、田茂木の胸に、わぁ~ん!と泣きながら、飛びついていった。
(つづく)
○「それこそが、変態の道なのだよ、それも非常に模範的な変態のな。ロロン君」
○「変態の道だと?仮令人造人間相手でも、愛を捧げることが変態ということか!」今度は田茂木茸雄が、つっこんだ。朝永は、胸を大きくそらし「その通りだ」といった。そこには勝ち誇ったような、驕り高ぶったような、とにかく、目の前にいる相手を見下しきったような根性が見え見えだった。
○田茂木は朝永に、向かってこう言った。「あなたがそういう、人間の多様性を否定し、見下すような心を持っているとはつい今しがたまで知りませんでした。金輪際、私はあなたのもとを訪れることはないでしょう。同じ昆虫愛好家だったから、多様性に理解のある、よい人だと思っておりましたのに…残念です。もう2度とお会いしたくありません」そして、ロロンにはこう言うのであった。「こういうオヤジと喧嘩しても、ろくなことはない。あんなのに何を言われても気にしてはいけない…さぁ、帰ろう。僕等の巣へ」
○二人は朝永のもとを去って行った。一人残された朝永は、拳を固く握り締めていた。
☆ ☆ ☆ ☆
○それから数日経ったある日のこと、ロロンは田茂木の蝶採集の手伝いをしていた。お花畑が一面に広がる緑の人工惑星で、捕虫網を手にして、田茂木と共に、見たこともなく、図鑑にも載っていない蝶を捜していた。
○あるとき、ロロンの目の前に、不思議な紫色のはねをした、ひらひらと舞うものが、顕れた。ロロンはばっ!と素早く網を振った。果たして、その紫のものは、首尾良くロロンの捕虫網の中に入った。
○ロロンは、大急ぎで田茂木のもとに紫のものを捕まえた網を持っていった。田茂木が、早速網を改め、その紫のものを掴んだ。それを見た田茂木の表情に驚愕の色が走った。おぉ~!彼のとんがった出っ歯がちの口から、感嘆の声がもれた。
「これは…紛れもなく、銀河じゅうの蝶好きが探して止まなかった、幻の蝶だ!」
「何という名前の蝶?」
「ムラサキマダラトリバネアゲハ」
「発見例がこれまで、世界に2例しかない、貴重な蝶だ。我々で3例目だ。早速学会に報告だ」
○その時だった。ムラサキマダラトリバネアゲハが、パタパタと羽根を動かし、リンプンを飛ばした。あっ!田茂木の眼にそれが入ったらしく、彼は身悶えして苦しみ出した。「田茂木さん!シッカリして!」ロロンは田茂木の顔をみた。顔面に醜く紫がかったこぶが出来、地が噴き出していた。グアぁ~!と田茂木はどす赤い血を顔面から大量に流しながら、やがて動かなくなった。
○「田茂木…さん?」ロロンは、田茂木をひっしでゆすったが、ピクリとも動かない。胸に耳を当ててみた。果たして、心臓は見事に止まっていた。呼吸も停止していた。それでも彼女は彼の胸に手を当て、心臓マッサージを試みた。しかし、彼は完全に氷のように冷えきった肉の塊となっていた。田茂木は、絶命した。
○ぎゃー、というロロンの悲鳴がお花畑じゅうにコダマした…。ロロンは泣き続けているうちに、意識が混濁していった…。
○気がついた時には、田茂木の家のベッドの上だった。田茂木が心配そうに「どうした?酷くうなされているようだったが…」。
○…あぁ、茸雄さんは、生きている!今のは夢だったんだ…!ロロンは、眼を見開いて、田茂木の胸に、わぁ~ん!と泣きながら、飛びついていった。
(つづく)
2008-12-30 10:11
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