SSブログ

脳と魂をめぐる問題。 [雑学小論文]

☆脳科学の核心からずれつつある?“脳ブーム”☆


@2004~2005年以来、未だに続く“「脳」ブーム”。きょうびの日本人の中に渦巻く、人間のぼけ≒認知症への不安や脳のことについてもっと知りたい、子供を頭のよい子にしたいという願望などが、如何やらこのブームの長期化に拍車をかけているようだ。

@先日には、ついに「脳科学者」が登場するドラマまで放映が始まった。SMAP・木村拓哉の主演するその「MR.BRAIN」の予告を見て、「嗚呼…脳ブームとやらも、ついにここまで来ちまったんだなぁ」と腹の中でぼやかざるを得なかった。

@それほど、現時点でとどまることを知らぬ「脳」ブームの、今は最中なわけなのだが、もっとも難しく、しかも、脳というもののフルマイの、各方面における核心問題に迫ることには、私のこの拙い頭で推測するに、ホトンド何一つ触れていないようにしか思えないのは何故であろうか。


☆脳科学(脳)と哲学(魂)との対話☆

@先日(05/26)、明治大学駿河台キャンパスの「アカデミーコモン」と言うところで行われた、気鋭の脳科学者、茂木健一郎博士と、哲学者の明大教授・合田正人氏との対談(「脳と魂の対話」)を聞く機会をゲットし、極めて難解で高度な内容ながらも、拝聴させてもらった。

@そこで感じたのは、「脳」と「魂」≒「心」との間には、流通化されない、ましてや安易にTVドラマなどに通俗化されない、実に込み入った、ややこしい問題が幾つも横たわっている、ということだった。例えば「喪失」とか「欠落」という、一件易しそうな現象にも、その奥を掘りかえそうとすると、「決して見過ごせない」重大な本質が転がっているという。それは単に欠落か喪失と引き換えに『何か』を得る、という問題以外にも非常に深い問題を内包しているという。

@この対談に出席された茂木健一郎博士が真正面から向き合って取り組んでいる、人間が世界を把握するために必要な感覚(Qualia)と偶有性(=偶然性,Contingency)、相互作用の同時性、自由意思と欲望との関係…などという、極めて「パラダイム・チェンジ」が必要な難題は、昨今の「脳」ブームに浮かれる風潮からは(それが脳科学界にとっても、取り上げられるべき重大なテーマであるにも関わらず)端っこに置かれてしまっている、ということを、茂木博士自身が語っていたのが、印象に残った。

@また、Qualiaと生命哲学とのつながりは、Qualiaを突き詰めると生命原理から離れていくという逆説性はあるものの、(最終的には)必ず見えてくるという話は、私自身にとっても何故か合点のいく話であった。何故なら、感覚とか意識(無意識)の生成、志向性などというのも、、呼吸や食物摂取などと同じく、生命活動の一環としか感じられないからだ。

@会場のようすの印象として、合田教授が非常に難しい質問を茂木博士に投げかけ、茂木博士がそれを受けとめ、うんうんと考えた後で応えていたのが記憶に残っている。

@この対談を聴いた後で、強く感じるのは、昨今の「脳」ブームと、脳科学と哲学とが、それぞれが向き合うべき、上に述べたような難解で複雑な問題を解き明かす力をまだつけていない、ということだ。

@これらの難問を解き明かすには、如何しても本当に考えかたの一大転換というか、パラダイム・シフトというか、そうしたものが必要で、それが起これば、大きな知のブレイクスルーもきっと起こりうる、と思った。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。