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魚肉ソーセージ事始。 [企業史・広告史]

@スーパーやコンビニなどでよく見かける、魚肉ソーセージ。一般家庭の手軽なおかずの材料としてなくてはならない食材である。

@健康にもよいと人気の魚肉ソーセージ。このソーセージが何時、何処で、どんな魚を材料として生まれたか、知っている方はそんなにいまい。この食材の材料は、鯵(アジ)肉をかまぼこを作る要領で練り物状にしたもので、これをオレンジ色の「ライファン」と呼ばれる素材でできたケーシングに詰め、高温殺菌して作るのだ。

@これを最初に売り出したところは、愛媛県は八幡浜市にある「西南開発」という食品会社。1949(昭和24)年、同社の前身・西南開発工業組合が鯵肉を使って最初の魚肉ソーセージ「スモークミート」を作ることに成功した。この成功を受けてか、2年後の1951(昭和26)年、西南開発と社名変更して生産体制を整え、大阪の学校給食などに供給されていた。品質が非常に安定していたことから、東京を中心として全国に販売網を持つ明治屋と提携し、一躍全国区となった。

@「スモークミート」の成功に続き、同じ年の10月には日本水産がマグロ肉を材料にした「ツナソーセージ」を売り出し、続いて大洋漁業(現・マルハ)も魚肉ソーセージを発売した。1954(昭和29)年、ビキニ環礁で行われた水爆実験によりマグロ漁船・第5福龍丸が被爆し、それゆえの風評被害が皮肉にも幸いし、魚介類の価格が下がってコスト削減になり、水産各社とも魚肉ソーセージの生産に力を注ぐようになった。

@魚肉ソーセージは、そのまま丸かじりしてもおいしいだけでなく、キャベツなどといっしょに炒めたり、お弁当のおかずにしたりなど、お手軽な豚肉や牛肉の代用食材として各家庭に浸透していった。


@畜肉の代わりにマグロや鯵などの魚肉を使ったハムやソーセージは、実は大正のはじめ頃から何度も構想されてきたものだという。長年の研究が報われ、構想がやっと現実化したのは1935(昭和10)年、当時の農林省の清水亘がマグロを利用したプレスハムの試作に成功したが、あいにくそのあと例の戦争になり、研究がストップしてしまう。

@先述の西南開発は戦後の食生活の欧米化を予想して、かまぼこのように魚肉を材料としたソーセージを作れば、日本人の好みに合うのではないかと考え、魚肉ソーセージの開発に着手した。当時の瀬戸内海では捨てるほど鯵が水揚げされていたから、この鯵肉を使って作ればよいとひらめいた。

@地元・愛媛で培ったかまぼこ作りのための練り技術を応用し、1年間の試行錯誤の末、鯵肉と豚肉を混ぜて練り上げ、味付けをしてライファンに包んで成型し、高温殺菌して完成させた。

@鯵の骨や内臓を取り除き、石臼を用いて塩・砂糖・香辛料などとよく練り合わせ、滑らかなすり身を作ってライファンのケーシングに詰めて高温で殺菌。すり身がボイルしてケーシングの中で固まり、ソーセージが出来上がる。

@西南開発はこうして確立した技術を他の食品会社にも惜しげもなく(?)公開したので、何処の会社でも魚肉ソーセージを作れるようになり、各社で競争が激化していった。


@その後、高度経済成長時代に入り、電気冷蔵庫が普及しだすと、日持ちのしにくい畜肉のハムやソーセージが普及していった。結果、魚肉ソーセージはそれらの代用品として見られだすようになった。さらに1970年代後半、魚肉ソーセージ業界に受難の時が訪れる。

@当時使われていた防腐剤「AF-2」について発ガン性、催奇性が指摘された。1979年のことである。業界は大打撃を受けた。消費者は魚肉ソーセージを嫌うようになった。この受難が魚肉ソーセージの製法を大きく変えることになる。

@機密性を高めたケーシングを使い、高温高圧で殺菌するレトルト処理を行うなどの製造方法を確立したのである。こうして受難を超えた魚肉ソーセージは、再び安心・安全な食材として各家庭に歓迎されるようになった。

@平成の世に入り、世界中で牛海綿状脳症(BSE)が影響していると見られる“クロイツフェルト・ヤコブ病”患者が多く発生した。さらに輸入肉にBSEを引き起こすとされた部位が混じっていたりなど、人々が畜肉への信頼を失い始めた時、魚肉ソーセージは「ヘルシー!」「安心安全!」な食べ物としていっそう注目されるようになった。

@こうした市場のニーズを受けて、各社はそれぞれ、DHA(ドコサヘキサエン酸)入りの商品やカルシウム入りの商品などを立て続けに発売した。子供向けのイチゴ果汁入りソーセージや、野菜入りの物も出るなど、ヴァリエーションも広がっている。今までどおりのシンプルな魚肉ソーセージも人気は健在である。

@誰の記憶にもある、赤い包装、ケーシングに包まれた魚肉ソーセージ。包装の金具を咥え、ケーシングを剥いて、ピンクのソーセージをかぶりつく。塩味のきいた風味。よみがえる、ピンク色のチープなソーセージをおいしそうにかぶりついた幼い日の思い出。魚肉ソーセージは、近年高まる一方の健康志向と相俟って、今後も愛され行くことだろう。



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