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銀河系・明日の神話(6) [ドラマ・ミニアチュール]

●エリーに迫る危機(3)●


◇銀色をしたガルーロケットが惑星エリーに到着し、田茂木茸雄、ロロン、ジークフリートの3人がエリーの沙羅曇(さらどん)平野に降り立ったわけ。それは少し前に惑星シエスタの都・コイモイスで出会った、田茂木の盟友で天文学者のキメラから、エリーを襲っている「ある危機」を知り、ジークフリートが持っていた二つの珠のうち、朝永らに奪われた珠の捜索を後回しにして、エリーの今現在の様子を見にこようと思い立ったからだ。

◇ロケットから降りて、3人があたりを見回すが、さし当たって顕著な異変は、この平野あたりでは起こっていないようだ。
 
 田茂木「何処から見ても…うーん…画に描いたような緑の草原じゃないか」
 
 ロロン「本当…とんでもない危機なんて、起こっているのかしら?」

◇そのとき、ジークフリートが、西側の地平線を指して叫んだ!

 ジークフリート「あ、あれを見て!!」


◇「え?何だ、なんだ?」 2人が西側へと寄って見ると、ぶわ~ん、と蜂の羽音のような唸り音とともに、黒い塊がこっちへ向かってやって来る気配が…。羽音は徐々にでかくなり、黒い塊はアメーバのように自在に形を変えて、確実にこっちへ迫ってくるではないか。

 「うわーっ!」 「なんじゃこりゃあー!」「に、逃げろおぉぉー!!」

◇脱兎の如く逃げ出す3人。黒い塊の正体は、地球に棲むスズメバチのような大きめの、危険な蜂であった。

 田茂木「ひええ・・・!まさか、エリーにきて、蜂の大群に襲撃されるなんて、思ってもみなかったヨー!!」
 
 
◇「キャーッ!」悲鳴をあげて逃げ回るロロン…。「こっちへ来い!」田茂木が走りながら、ロロンのほうへ手を伸ばし、彼女と手をつなぎ、腕に抱えて一緒に逃げ出した。その際田茂木は、懐からあるカプセルを取り出し、空中へ放り投げた。

 パン!

◇カプセルが空中で、大きな破裂音を立ててはじけると、無色透明に近い白い霧が流れ出した。途端に蜂の大群が飛翔力を失い、ポトポトと地面に落ちてきた。「ひーッ!」空からまた蜂が落ちてきたのに、またも悲鳴をあげるロロン。


◇やがて蜂が全て地面に落ちて絶命し、あたりは静かになった、3人はゼーハーゼーハー、と肩で大きな息をして、よろよろと草原の上に座り込んだ。ふと田茂木は、昆虫研究者の血が騒いだのか、落ちた蜂を調べるべく、一匹の死骸を拾ってみた。

◇刹那、彼の両眼がパッと見開かれ、おおおっ、と驚愕が顔に現われた。「こ、これは…」


◇「ど…如何したの?」まだ肩で息をしているロロンとジークフリートの2人が、蜂の死骸を持ったまま動かなくなっている田茂木の様子を訝り、ヨロヨロと立ち上がってから、彼に近づいてきた。

 ロロン「茸雄さん、如何して驚いているの?」 田茂木は死んだ蜂を彼女に見せた。

 田茂木「見て御覧、これを・・・!」

◇蜂の死骸を見たロロンの精巧な脳型コンピュータが、アーカイブデータの抽出を行い、眼内ナノ級カメラに映し出された蜂の映像との照合を行った。結果実物の蜂と、抽出された蜂のデータはピタリと符合した。データの抽出・照合から実物とデータの符合まで、掛かった時間は僅か0.000001秒。

◇符合の結果、地球に生息しているスズメバチ科の蜂、“キイロスズメバチ”とわかった。

 ロロン「あっ!…如何して、地球の蜂が…?」

 田茂木「…やはりそうか…エリーは…」

 ジークフリート「エリーは…?」

◇田茂木の顔は真剣だった。「エリーは明らかに温暖化し、かつ生態系が異変をきたしている!この蜂はエリーにはもともと生息していない。やはり・・・キメラが言っていたように、人間の移住による開発が、この星に温暖化を齎し、かつ外来生物の大発生を招いているんだ!」

 ロロンとジークフリート「ええっ!」(飛び上がって驚く)


◇その頃…。惑星エリーの東南東に向かっていた最新鋭の宇宙航行機が、やがて森林の中に、円くつくられた、一つの集落らしき場所を見つけ、そこへ着陸しようとしていた。岩沢真佐雄と森沢乃理子が乗っているこの航行機は、低空モードに入ったあと、そこで空中停止した。地上から僅か5mと言う低空で停止している。

◇航行機のハッチが開き、そこから梯子ロープが長々と伸びていった。やがてロープが着地する頃、一組の男女がゆっくりと降りてきた。2人はヘルメットを脱いだ。そのときだった。

◇「のりこー!まさおー!」…2人を呼ぶ声がしたかと思うや、図体のでかい毛むくじゃらの、二足歩行の短足生物がドドドド…!と地面を思い切り蹴立てて走りよってきた。日の光が当たると七色に輝く毛皮で覆われた、彼の顔には、丸いビー球のような眼が2つついていた。
瞬間、2人の顔が満面喜色に輝いた。彼等は叫んだ。「プルプル!プルプルじゃあないか!」

◇2人は、そのプルプルという毛むくじゃらの巨人の胸に、ポーンと、飛びついていった。3人は互いに顔を喜びの涙でくしゃくしゃにしながら抱き合っていた。やがて巨人は、彼等2人の身体をこちょこちょと、くすぐり始めた。2人も巨人をくすぐり返した。

◇ゲストをくすぐるのは、この種族特有の歓迎セレモニーである。「ハハハハ・・・」あまりのくすぐったさに彼等は大笑いした。

(7)に続く・この物語はフィクションです。
タグ:SF物語
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