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銀河系・明日の神話(10) [ドラマ・ミニアチュール]

●再びプルーレ湿地帯にて●


@幻の蝶「モルディカヤ」を見つけようと思い立ち、湿地帯プルーレの探検を始めた、惑星昆虫学者の田茂木茸雄とその助手役で女性型高性能ヒューマノイドのロロン、同じく男性型のジークフリート。鬱蒼たる上にしっとりべったりとした空気が肌に張り付く、昼間も薄暗い、古代植物が生い茂る密林の中を、昆虫採集機器一式を持ち歩き、迷彩姿に身を包んで、ガサガサガサと行軍している。

@時折3人の鼻孔に、ほんのりと入ってくる、未だ見たこともない、この地ならではの花たちの、馨しい香り。その芳香が、彼等の足取りを軽くする。

@田茂木は捕獲ネットを持ち、お目当ての蝶がやってこないか、今か今かと待ち構えながら先頭を歩いていた。と、彼の目の前を、ひらひらっ、とよぎる影が!

 「よっ!」 さっ!…気合を込め、剣を振るうようにネットを振り下ろした。手ごたえがあった。素早くネットを握って引き寄せ、中の獲物をよくよく見た。獲物はパタパタと、激しくネットの中で羽ばたいていた。

 「獲れた?」ロロンとジークフリートが、捕獲ネットを持っている田茂木の前によってきた。

 「うーむ」…如何やら、お目当ての種類ではないようだった。「こいつは『アマタラ』だ」

@ネットに入っている蝶…アマタラは、紫がかった金属光沢の、青い色の光を放つ、地球で言うモルフォによく似た、ここ惑星エリーではお馴染みの種類である。ロロンはこの蝶を標本では知っていたが、本物を見るのは初めてだ、と言った。

 「これが…これがアマタラなのね!とっても綺麗に輝いているわ!」彼女は生きているアマタラを見られたので、いたく感動していた。緑色の澄んだ眸が、キラキラと輝いている。生きているアマタラの姿がその瞬間、彼女の脳型コンピュータにインプットされた。

@無論、ジークフリートにとっては、アマタラは未知の蝶類であった。初めて見る金属光沢に輝く蝶の姿に、しかし、彼も魅せられていた。「綺麗だなぁ・・・」 彼の脳型コンピュータにも、この美しいアマタラの姿が、しっかりとインプットされ、サーバに保存された。

@田茂木は、お目当てでなかったこともあってか、ネットからアマタラを森の中へと、解放した。やっと解放された喜びにか、アマタラは、嬉しそうにやわらかに、ひらひらと飛翔して、薄暗い森の彼方へと消えていった。ロロンとジークフリートは「嗚呼もったいない」といった顔をして、蝶の飛んでいった方向を見つめていた。

@「しゃあないわ。先をいこう」と言って田茂木は、捕虫網を手に、採集用品一式を肩から掛けて、あとの2人を連れて、森の中をモルディカヤを探しに、歩いていった…。

@丁度その頃だった、あのヘンな科学者連中3人が、プルーレの中心部にある田牟礼湖のほとりで、なんと!エリーの剣歯虎(サーベルタイガー)に襲われていた。

 うわああああ~!! ピュピューン、ピューン!

@3人は腰にぶら下げている光線銃を撃ちまくりながら、サーベルタイガーの攻撃をかわしていたが、

 ぐぁあおおおー!!

@渾身の力を込めて思い切り飛び掛る巨大な猛獣の前には、3人の命は風前の灯と思われた、が、そのとき!

 バァーン!

@大きな銃声がした、と思う間もなく、虎はどおっと彼等の目の前で、いきなり倒れた。鉞のように馬鹿でかい牙が目立つ、大きな口をあけて、ガアー!と一声吼えると、虎は、そのまま動かなくなった。

@「あわわわ…」ガタガタ震えまくる3人の前に、一つの人影が現われた。3人が恐る恐る見上げると、其処に立っていたのは…。狩猟用のライフルを手にした、一人の若者だった。否、あと2人いる。それは妙齢の、サラサラと流れるような美しい黒髪の女性と、緑色の毛皮に覆われた、ビーダマのように丸いぎょろぎょろとした眼を持つ巨体の男だった。

・(11)に続く・この物語はフィクションです。・続きは後日掲載の予定です。・

タグ:SF物語
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