銀河系・明日の神話(11) [ドラマ・ミニアチュール]
●モルディカヤを求めて、そして●
★「お…おわわ…」 3人の中年男たちは、各々歯を五月蝿いほどにガタガタ言わせ、びびりまくっていた。「ひ…ひいっっ…!…お、おたすけをぉぉぉ・・…」
★哀れな3人を見つめていた、青年は、破顔一笑し、「ハハ…もう助かってますよ」。
★「え?!」、きょろきょろと3人が見回したところ、目の前にさっきまで自分たちに襲いかからんとしていた虎が、ドーンと横たわったまま、びくとも動かないではないか。
3人「ひ…ひえぇぇぇ!」
青年「もっとも、いま撃ったのは麻酔弾です。あと小市時間もすれば、こいつは目を覚まします、御三方、今のうちにご退散なさったほうがよろしいのでは?」
ドド「え、えええ~!? 死んでるんじゃないの?」
朝永「…兎に角此処を離れなくては…あ!こ、腰が…」
アスピナーレ「腰が…如何した?」
朝永「…ぬ、抜けちまった…!」 2人「うわ~!! ヤバイ、ヤバイ!」
★ドド・アスベンとアスピナーレの2人は、朝永の両腕を2人で担いで引きずりつつ、よたよたとその場から逃げ出していった。
★「何という奴らだ!助けてあげたのに礼も言わないなんて」 プルプルがむくれながら言った。「まあ、ほうっておけ。それより、僕達も此処を早くあとにしないと、虎が眼を覚ましてしまう」
プルプル「そうだった!」 若者3人もその場を足早に去った。
★何処のあたりまで歩いた事だろう。岩沢真佐雄、森沢乃理子、プルプルの3人は、プルーレ湿地帯森林のおそらくは奥深いところへ迷い込んだようである。
★乃理子が方位コンパスを懐から取り出す。が、磁針はぐるぐると回っている。そのことが乃理子の心象に不安の影
を齎した。「地磁気が狂っているわ…」
★「如何だい?」と覗き込む男子2人。が、乃理子の顔は不安に曇っているし、方位磁針はぐるぐるをやめない。回りつづける方位磁針を見て、男子2人も、すぐに不安になった。
「こりゃあヤバイ。明らかに地磁気がおかしくなっている」
「俺たちは、如何やら、二度とは戻れない森の奥地にきちまったんじゃないかしら・・・」
「やめてよ!…」乃理子が今にも泣き出しそうになった。
そのときだった。
★「俺に任せろ」そういったのは、他ならぬエリー土着の住人、プルプルだった。ビーダマのように丸くて大きな彼の両眼が、きらり、と輝いたのを真佐雄は見逃さなかった。
「そうか!彼はもともとこの星の、『トゥープゥートゥー』村の住人なのだ。15年前に再会したとき、彼は旅人の案内役をしていたから、このエリーの地理に詳しくないわけはない」 真佐雄と乃理子は、彼に身を任せ、この迷宮の如き湿地林を進む事にした。
★地球人の真佐雄と乃理子より、背丈が大きく2m近い、緑色をした毛むくじゃらな大男のプルプルは、左の腕に、真佐雄をしっかと抱え、右の腕に乃理子を抱えた。彼女の身体に右腕を回して抱きしめたとき、女の肉体のやわらかさをプルプルは右のかいなに感じ、身体の奥が熱く燃えるのを覚えた。そして彼は、自分が未だに乃理子を心底愛している事を確かめるのだった…。彼の口からごく小さな、溜め息が、漏れた。「嗚呼…」
★一方、幻の蝶「モルディカヤ」を探しにプルーレを探検しているもう一つの一団…惑星昆虫学者の田茂木茸雄、超高性能女形ヒューマノイドのロロン、同じく男形のジークフリートの3人は、先の3人組が歩いている方向とは、今、まったく反対側の向かい合わせの、道なき道を進んでいた。
田茂木「うーん、なかなか、見つからない・・・」
ロロン「如何するの?茸雄さん…」
田茂木「確か此処の森にひっそりと生息していると、データにはあるはずなんだがなぁ…」
ジークフリート「田茂木さんの持っている蝶類分布のデータ、些か古くなってないですか?」
田茂木「オレの持ってきた蝶の分布データは、最新の調査結果で得られたデータだ。古くはないさ」
ロロン「でも、ひょっとしたら・・・絶滅しちゃった・・・かも・・・」
田茂木「まさか!・・・必ず居るはずだ。幾ら温暖化が進んでいるとはいえ、簡単にあの蝶たちが、滅びるものか」
★とかなんとか口々に3人が言いながら、先へ、先へと進んでいくと、…
「おや?」 先頭を行く田茂木が不思議そうな顔になって、先を指差した。「見ろよ、あそこになんだか人影らしいのが3つあるぞ」
ロロンとジークフリート「どれどれ・・・あっ!」
★それは何と、巨大な毛むくじゃらの生き物の両脇に抱えられた、2人の地球人らしき男女だった。田茂木らがどんどん歩いていくと、ぼんやりしていたそれらの姿が、徐々にはっきりくっきりしてきた。
★突如、田茂木は声をあげた…!「おおっ!あれは…!の、乃理子くんじゃないか?」 彼の後ろを行くロロンも声を揚げそうになった・・・ああ!あの人は、ベルベルの神殿で2人が出会った、森沢乃理子さんだわ・・・!彼女は思わず大きな声で呼びかけた。
「乃理子さーーーん!」
★そのとき、乃理子は自分を呼ぶ声がしたようなのにびっくりして、耳を済ませた。真佐雄とともに、プルプルのがっちりした腕に抱かれ、逞しい毛むくじゃら男の身体の温かさと、息遣いと心音の響きを聞きながら…。
「乃理子さあああーん!」
★「嗚呼!あの人だわ!確かベルベルで出会った、ロロン…ロロンなのね!田茂木さんも一緒だわ!」 乃理子には、自分達の向こうに居る一団が何者か漸くわかった。彼女は一団に向かって手を振った。
「ロロ―ン、私よー!乃理子よー!」
★やがて…彼らは顔と顔とが触れ合う距離にまで近づいた。ロロンと森沢乃理子は、互いの顔を見るなりささっと近寄り、互いに抱き合い、久しぶりの再会を喜び合った。田茂木茸雄も、彼女との再会を心から喜んでいる。
「ロロン、あれから如何していたの?二度と合えないと思っていたわ…」「私も…」
★女たち2人の綺麗な眸には、それぞれに涙が浮かんでいた。それを観ていた男たちは、田茂木を除いては、2人のこんな姿を見るのは初めてである。
★乃理子は、田茂木とロロンを、真佐雄とプルプルに紹介し、次に、2人を田茂木とロロンに紹介した。
田茂木「地球で惑星昆虫学者をしている田茂木茸雄と言うものです。こちらのロロンは、パートナーです」
真佐雄「そちらに居る、もう一人の彼は?」 田茂木は、ロロンのうしろに居る若造を紹介した。「ジークフリートだ。ちょっと訳があって、俺たちといっしょにいるんだ」、真佐雄が手を差し出して彼と握手したとき、彼の手の冷たさに真佐雄はぎょっとした。「アンドロイドじゃないか…」
★田茂木と握手したとき、地球人のような手の暖かさを感じた。が、彼の、毛穴のない異様にツルツルした頭部を見たとき、真佐雄は驚いた。田茂木の頭部が、自分が見てきたプカスカの住人のそれにそっくりだからだ。
真佐雄「田茂木さんは・・・ひょっとして、惑星プカスカの人なんじゃないんですか?」 田茂木の顔に一瞬、驚きが走ったが、すぐに平静になるなり、こういった。
田茂木「俺はプカスカと地球の2つの血を引いているのさ。オヤジはプカスカ、おふくろは地球人、しかも、日本人だ」
★やがて日も暮れ始め、合流した6人は、プルプルの道案内で先に進み、ようやく、田茂木たちがキャンプを張っている場所にやって来た。「テントは生憎ながら3人用だ。みんな入ったら、ぎゅうぎゅう詰めになっちゃう」
「ここまで来て、すし詰め満員電車の気分を味わうのは、ご免蒙るよ。後ろの毛むくじゃらのプルプルはでかいし、何よりお嬢さん2人がかわいそうだ」
「そういうと思って、実はいいものを用意してきたんだ」 そういって田茂木が懐から取り出した、風船の如きものをハンドポンプに取り付け、足で蛇腹のようなふいごをフコフコ押してぷわ~っ、と膨らますと、テントの形をした「エアーハウス」なるものが現われた。
真佐雄・乃理子・プルプル「おぉ~!」
田茂木「これなら6人は裕に過ごせるな」
★夜もすっかりふけた頃、彼らは昼間のそれぞれの、冒険ですっかり疲れきった心身をその「エアーハウス」の中で横たえ、重なり合い、あるものは抱き合い、あるものはらくだの毛布を頭からすっぽりかぶって、すやすやと寝入っていた。
★エアーハウスの中で、男女の営みが始まった、坊主頭の男と緑色の眼をした女、若い日本人同士の男女が、それぞれ、肉体を愛撫しあい、互いにさかりのつきし獣の如き声をあげ、激しい吐息をもらして、延々と行為に没頭していた。
★プルプルとジークフリートは、互いに抱き合い、らくだの毛布にもぐりこんで寝ていた。…かくて、プルーレの夜は白々と明け始めた。
・(12)に続く・この物語はフィクションです。
★「お…おわわ…」 3人の中年男たちは、各々歯を五月蝿いほどにガタガタ言わせ、びびりまくっていた。「ひ…ひいっっ…!…お、おたすけをぉぉぉ・・…」
★哀れな3人を見つめていた、青年は、破顔一笑し、「ハハ…もう助かってますよ」。
★「え?!」、きょろきょろと3人が見回したところ、目の前にさっきまで自分たちに襲いかからんとしていた虎が、ドーンと横たわったまま、びくとも動かないではないか。
3人「ひ…ひえぇぇぇ!」
青年「もっとも、いま撃ったのは麻酔弾です。あと小市時間もすれば、こいつは目を覚まします、御三方、今のうちにご退散なさったほうがよろしいのでは?」
ドド「え、えええ~!? 死んでるんじゃないの?」
朝永「…兎に角此処を離れなくては…あ!こ、腰が…」
アスピナーレ「腰が…如何した?」
朝永「…ぬ、抜けちまった…!」 2人「うわ~!! ヤバイ、ヤバイ!」
★ドド・アスベンとアスピナーレの2人は、朝永の両腕を2人で担いで引きずりつつ、よたよたとその場から逃げ出していった。
★「何という奴らだ!助けてあげたのに礼も言わないなんて」 プルプルがむくれながら言った。「まあ、ほうっておけ。それより、僕達も此処を早くあとにしないと、虎が眼を覚ましてしまう」
プルプル「そうだった!」 若者3人もその場を足早に去った。
★何処のあたりまで歩いた事だろう。岩沢真佐雄、森沢乃理子、プルプルの3人は、プルーレ湿地帯森林のおそらくは奥深いところへ迷い込んだようである。
★乃理子が方位コンパスを懐から取り出す。が、磁針はぐるぐると回っている。そのことが乃理子の心象に不安の影
を齎した。「地磁気が狂っているわ…」
★「如何だい?」と覗き込む男子2人。が、乃理子の顔は不安に曇っているし、方位磁針はぐるぐるをやめない。回りつづける方位磁針を見て、男子2人も、すぐに不安になった。
「こりゃあヤバイ。明らかに地磁気がおかしくなっている」
「俺たちは、如何やら、二度とは戻れない森の奥地にきちまったんじゃないかしら・・・」
「やめてよ!…」乃理子が今にも泣き出しそうになった。
そのときだった。
★「俺に任せろ」そういったのは、他ならぬエリー土着の住人、プルプルだった。ビーダマのように丸くて大きな彼の両眼が、きらり、と輝いたのを真佐雄は見逃さなかった。
「そうか!彼はもともとこの星の、『トゥープゥートゥー』村の住人なのだ。15年前に再会したとき、彼は旅人の案内役をしていたから、このエリーの地理に詳しくないわけはない」 真佐雄と乃理子は、彼に身を任せ、この迷宮の如き湿地林を進む事にした。
★地球人の真佐雄と乃理子より、背丈が大きく2m近い、緑色をした毛むくじゃらな大男のプルプルは、左の腕に、真佐雄をしっかと抱え、右の腕に乃理子を抱えた。彼女の身体に右腕を回して抱きしめたとき、女の肉体のやわらかさをプルプルは右のかいなに感じ、身体の奥が熱く燃えるのを覚えた。そして彼は、自分が未だに乃理子を心底愛している事を確かめるのだった…。彼の口からごく小さな、溜め息が、漏れた。「嗚呼…」
★一方、幻の蝶「モルディカヤ」を探しにプルーレを探検しているもう一つの一団…惑星昆虫学者の田茂木茸雄、超高性能女形ヒューマノイドのロロン、同じく男形のジークフリートの3人は、先の3人組が歩いている方向とは、今、まったく反対側の向かい合わせの、道なき道を進んでいた。
田茂木「うーん、なかなか、見つからない・・・」
ロロン「如何するの?茸雄さん…」
田茂木「確か此処の森にひっそりと生息していると、データにはあるはずなんだがなぁ…」
ジークフリート「田茂木さんの持っている蝶類分布のデータ、些か古くなってないですか?」
田茂木「オレの持ってきた蝶の分布データは、最新の調査結果で得られたデータだ。古くはないさ」
ロロン「でも、ひょっとしたら・・・絶滅しちゃった・・・かも・・・」
田茂木「まさか!・・・必ず居るはずだ。幾ら温暖化が進んでいるとはいえ、簡単にあの蝶たちが、滅びるものか」
★とかなんとか口々に3人が言いながら、先へ、先へと進んでいくと、…
「おや?」 先頭を行く田茂木が不思議そうな顔になって、先を指差した。「見ろよ、あそこになんだか人影らしいのが3つあるぞ」
ロロンとジークフリート「どれどれ・・・あっ!」
★それは何と、巨大な毛むくじゃらの生き物の両脇に抱えられた、2人の地球人らしき男女だった。田茂木らがどんどん歩いていくと、ぼんやりしていたそれらの姿が、徐々にはっきりくっきりしてきた。
★突如、田茂木は声をあげた…!「おおっ!あれは…!の、乃理子くんじゃないか?」 彼の後ろを行くロロンも声を揚げそうになった・・・ああ!あの人は、ベルベルの神殿で2人が出会った、森沢乃理子さんだわ・・・!彼女は思わず大きな声で呼びかけた。
「乃理子さーーーん!」
★そのとき、乃理子は自分を呼ぶ声がしたようなのにびっくりして、耳を済ませた。真佐雄とともに、プルプルのがっちりした腕に抱かれ、逞しい毛むくじゃら男の身体の温かさと、息遣いと心音の響きを聞きながら…。
「乃理子さあああーん!」
★「嗚呼!あの人だわ!確かベルベルで出会った、ロロン…ロロンなのね!田茂木さんも一緒だわ!」 乃理子には、自分達の向こうに居る一団が何者か漸くわかった。彼女は一団に向かって手を振った。
「ロロ―ン、私よー!乃理子よー!」
★やがて…彼らは顔と顔とが触れ合う距離にまで近づいた。ロロンと森沢乃理子は、互いの顔を見るなりささっと近寄り、互いに抱き合い、久しぶりの再会を喜び合った。田茂木茸雄も、彼女との再会を心から喜んでいる。
「ロロン、あれから如何していたの?二度と合えないと思っていたわ…」「私も…」
★女たち2人の綺麗な眸には、それぞれに涙が浮かんでいた。それを観ていた男たちは、田茂木を除いては、2人のこんな姿を見るのは初めてである。
★乃理子は、田茂木とロロンを、真佐雄とプルプルに紹介し、次に、2人を田茂木とロロンに紹介した。
田茂木「地球で惑星昆虫学者をしている田茂木茸雄と言うものです。こちらのロロンは、パートナーです」
真佐雄「そちらに居る、もう一人の彼は?」 田茂木は、ロロンのうしろに居る若造を紹介した。「ジークフリートだ。ちょっと訳があって、俺たちといっしょにいるんだ」、真佐雄が手を差し出して彼と握手したとき、彼の手の冷たさに真佐雄はぎょっとした。「アンドロイドじゃないか…」
★田茂木と握手したとき、地球人のような手の暖かさを感じた。が、彼の、毛穴のない異様にツルツルした頭部を見たとき、真佐雄は驚いた。田茂木の頭部が、自分が見てきたプカスカの住人のそれにそっくりだからだ。
真佐雄「田茂木さんは・・・ひょっとして、惑星プカスカの人なんじゃないんですか?」 田茂木の顔に一瞬、驚きが走ったが、すぐに平静になるなり、こういった。
田茂木「俺はプカスカと地球の2つの血を引いているのさ。オヤジはプカスカ、おふくろは地球人、しかも、日本人だ」
★やがて日も暮れ始め、合流した6人は、プルプルの道案内で先に進み、ようやく、田茂木たちがキャンプを張っている場所にやって来た。「テントは生憎ながら3人用だ。みんな入ったら、ぎゅうぎゅう詰めになっちゃう」
「ここまで来て、すし詰め満員電車の気分を味わうのは、ご免蒙るよ。後ろの毛むくじゃらのプルプルはでかいし、何よりお嬢さん2人がかわいそうだ」
「そういうと思って、実はいいものを用意してきたんだ」 そういって田茂木が懐から取り出した、風船の如きものをハンドポンプに取り付け、足で蛇腹のようなふいごをフコフコ押してぷわ~っ、と膨らますと、テントの形をした「エアーハウス」なるものが現われた。
真佐雄・乃理子・プルプル「おぉ~!」
田茂木「これなら6人は裕に過ごせるな」
★夜もすっかりふけた頃、彼らは昼間のそれぞれの、冒険ですっかり疲れきった心身をその「エアーハウス」の中で横たえ、重なり合い、あるものは抱き合い、あるものはらくだの毛布を頭からすっぽりかぶって、すやすやと寝入っていた。
★エアーハウスの中で、男女の営みが始まった、坊主頭の男と緑色の眼をした女、若い日本人同士の男女が、それぞれ、肉体を愛撫しあい、互いにさかりのつきし獣の如き声をあげ、激しい吐息をもらして、延々と行為に没頭していた。
★プルプルとジークフリートは、互いに抱き合い、らくだの毛布にもぐりこんで寝ていた。…かくて、プルーレの夜は白々と明け始めた。
・(12)に続く・この物語はフィクションです。
タグ:SF物語
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