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呪わしい残暑の日に柄にもないスポーツ観戦。 [出歩く]

○9月初旬の7日、東京・千駄ヶ谷は国立霞ヶ丘競技場にて、前日より行われている全日本大学対抗陸上競技会(陸上全日本インカレ)なるものを見に行ってきた。

○呪わしい残暑の湿気た空気が、肌にまとわりつく気持ちの悪さ。天空ではメラメラと燃える烈日がまともに頭上を照らし、ややもすると脳内が沸騰するのではないかと思うくらい、頭がくらくらとするのを覚えた。

○千駄ヶ谷の駅に到着し、国立競技場側の改札口から出て、急く心を抑えつつ、会場に向かっていった。会場に着くとそこにはもうたくさん学生たちが集まっていた。チケット売り場でチケットを買って霞ヶ丘の競技場の門(千駄ヶ谷門)をくぐらんとした、まさにその時だった。

○私が去年から会いたいと思っていた、フィールドの妖精に、出くわしたのである。仲間たちとともに門をくぐろうとしていた彼は、まさに繊細で、説話に言う“妖精”そのものであった。

○彼に近づいていって、「ファンです。頑張ってください」と言って手を伸ばし、シェイクハンドを求めた。妖精は「はぁ…」といった顔をしていたが、そろりと手を伸ばして、軽く握手してくれた。彼の手は「真綿のような」という表現がぴたりとハマる、ふんわりと温かく、かつ柔らかな手だった。まさにそれは妖精の手だった。

○今にして思えば、いきなり彼の前に出てきて「ファンです」なんて言って、当人に対して申し訳ない思いもないわけではない。しかし、今頃は私のこんないきなりな訪問を許してくれていることだろう…。というか、私のことなどきれいさっぱり忘れていることだろう。

○それはさておき、可憐な妖精の手に触れることができた私は、もう天にも昇らんとする気分で、会場の中に入って行った…が、座席に座ろうとすると、日がもろにあたって実に暑くて閉口した。もうこれはダメだ、会場から外へ出てご飯を食べよう、と会場の外に出た。

○そこらにあった中華屋に入って、中華風カレー定食を所望。しばらくしてそれが来ると、熱いのをフーフー言いながら食す。食べ終わった後会場へまた戻って行った。

○いろいろな競技…4×100mリレーとか走り幅跳び、三段跳び、棒高跳びといった様々なフィールドでの若者たちの挑戦する姿に感動を覚えはするものの、やはりスポーツ観戦というのは自分にとって何だか場違いでしかないような思いにとらわれた。そんな思いを抱えながら、会場の中と外とを行ったり来たりしているうちに、お目当ての競技が始まる時間が迫ってきた!

○男子5000m決勝。大学陸上長距離界を代表すると言われる、スター選手たちが出場するのだ。今年の世界陸上の代表として出場した、日本を代表する若き第一人者・大迫傑(早稲田大学・4年)を筆頭に、琵琶湖毎日マラソンを経験した安定感抜群の大物・窪田忍(駒澤大学・4年)、高校時から双子ランナーとして名を売り、5月のゴールデンゲームズのべおかにて10000m決勝レースに出場し、日本人兄弟で初めて27分台を叩き出した名手・設楽啓太(東洋大学・4年)といった大スターたちを中心に、各大学が誇る名うての俊足たちが出そろった。

○私もなるべくこのレースを前で見ようと、最前列の手すりにつかまった。選手たちは皆戦闘モードに入っている。

○パン!号砲鳴りしその瞬間、選手たちが一斉に走り出した!先頭集団は大迫、城西大学の村山、そして設楽の順で走り出した。抜きつ抜かれつの激しいレースと記憶している。3000m過ぎあたりまで常に先頭をキープしていた大迫であったが、後ろから日大のダニエル・ムイバ・キトニー(2年/ケニア)がジワジワ追い上げてきた。これは面白いレースになる、と思うと同時に、大迫がこの間の日本選手権で佐藤悠基(日清食品G陸上競技部)に抜かれて2位になった時と同じような展開になるのではという危惧を抱いた。

○その危惧は的中、3000m~3500mあたりで混戦気味となり、やがてフィニッシュ近くになりキトニーが大迫を抜きかわして、トップに立つとそのままフィニッシュ。見事に優勝し、アフリカ系俊足のものすごさを観客に見せつけていた。

○2位には大迫がそのまま滑り込んできた。後で聞いた話では、彼は悔しい顔をしていたらしい。3位は窪田、設楽は4位だった。5位には設楽の同級生で同じ東洋大学の延藤潤という男が滑り込んできた。

○これでもう終わった、と思い、会場を後にしたときには午後8時を過ぎていた。帰りの電車の中で、昼間に出会い、申し訳なくも手を軽く握ってもらった妖精の手の柔らかさを思い出し、腹の中で「忘れられない」とつぶやいた。因みに彼は上に述べたレースに出た設楽啓太の双子の弟・悠太である。

○兄弟そろって大学ですでに大物ランナーとなっている彼等は、また彼等の同期生たちは、これから社会人ランナーとして、どんなふうに成長を遂げていくのか、それを楽しみに思う反面、やはり「文系」の人間たるこのわたくしには、スポーツ観戦はただ疲れるだけだ、と腹の中でため息をついていた。
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