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巨大文明のパーツ [詩的散文]

@アスファルトでガチガチに、固められてつくられた、道路をたっくさんの、いろんなかたちをした車が走っています。


@工場では、工作機械が唸りをあげ、製造ラインが川のように流れ、その上を作りかけの製品たちが規則正しく並んで、流されていきます。


@ハッとするほど美しい女性のように綺麗なビルの中では、スマートなパーソナルコンピュータが、タイピングの音も軽やかに、膨大な量のデータを処理していきます。



@車に乗ってハンドルを回して運転しているのは、人間です。

@工場で機械を動かしているのも、人間です。

@美女のように綺麗なビルの中で、パソコンを操作しているのも、人間なのです。


@けれども――彼等は “人間” ではありません。

@人間の形をしてはいるが、人間らしい、鋭いほどの知性の煌きと、そして生き生きとした、命の輝いて、はね躍るさまは、まず見られません
  (彼等の眼をじっと見つめると、死んだ魚の眼のように、まるで生気が感じられないのです)

@“人間” でない、とすれば、彼等は、いったい何なのだろうか…? そのとき。


@空から、眼には見えないが、翼のふたつ生えた、不思議な猿が飛んできて、私の肩にとまりました。そして…耳先で、こう囁いたのです。

 「あれは、みんな “パーツ” だ」

@瞬間、私の全身は…硬いかたい、石になりました。


パーツ! 部品! …そうなのです。車を動かしているのは、工場で機械を動かしているのは、ビルの中でパソコンを操作しているのは、…みんな、みんな、人の形をしたパーツ。


@この、異様にハイパーな、進歩し果てた複雑多岐で、何処か不気味な、硬質な、現代文明とネーミングされた怪物を構成している、

“とりかえのきくパーツ…部品” なのです。 こわれてしまえば、何時でも捨てられてしまう “部品” なのです。


@この部品たちが、自分達の中の、長く強く封印された魂の躍動を、外界へと解き放つ時、怪物のあまりにも巨大で堅固な身体はミリミリとひび割れはじめ、ほどなくバワンと砕け散り。

@その時、社会は、世界は大きく、激しく、変わっていくことでしょう。

(2008/09/04)




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